高福祉国家の「雇用を守る制度」が、かえって女性を苦しめる皮肉な現実写真はイメージです Photo:PIXTA

ジェンダーギャップ指数101位の韓国では、女性に厳しい雇用環境が続いている。意外なことに、高福祉国家のスウェーデンでも、女性が苦しむ現実がある。雇用を守るはずの制度があっても、なぜ女性が不利になってしまうのか。その皮肉な構造とは?※本稿は、行政学博士のチェ・ソンウン著、小山内園子訳『働きたいのに働けない私たち』(世界思想社)の一部を抜粋・編集したものです。

女性というだけで
就職に不利な韓国社会

 博士号を取得して就職活動をしていた頃、知り合いの教授と顔を合わせた。まだ大学にいるのかと訊かれた。「就職できなかったのか」という意味だったのだと思う。講師の仕事で収入を得ていたし、かなり大規模なプロジェクトで専任研究員も務めていたから、臆さずに答えられる状況だった。

 ところが、私の返事を聞いて教授はこう言った。「37歳って、意外に年代物なんだな。早く落ち着き先を決めたほうがいいんじゃないか?女が歳を取ると、居場所を見つけるのはラクじゃないぞ」。

 そうなのだ。企業の立場で考えると、歳を取った女性を投資の対象にする可能性は低い。人的資源としての価値を証明するのが、簡単ではないからである。

 雇用主にとっては、採用は未来への投資だ。人を採用するにはコストがかかるし、その人を会社に絶対不可欠な人材として育てるには、持続的な教育が必要になる。

 会社は、時間とコストをかけて育成した労働者が他社や別の産業へ移ることを懸念する。そのため、優秀な人材が長く会社にとどまるよう、該当の分野で競争力を高める教育の機会を与える。