企業にとっては、ライバル企業やライバル産業に労働力を奪われかねないという点が、人材育成を左右する変数だからである。
ところが、雇用保護制度が強力になるほど、むしろ女性は投資を受けられない傾向がある。国が女性の雇用を強力に保護すればするほど、それでも女性が辞めた場合、企業はより大きな損失を抱え込むことになる。
結局、最初から女性を選ばない方法で対応しようということになりがちなのだ。女性の労働力を保護している国ほど、逆説的に性別職務分離(注1)の現象が深刻になるのはそのためである。
強い雇用保護政策がとられている国では、企業は女性に、ジェンダーギャップを埋められるだけの熟練になる機会を与えない。
国家が強い雇用保護政策をとることで女性が労働市場から疎外されるという現象は、福祉国家スウェーデンでも見られる。
鉄鋼と自動車産業で経済発展を遂げたスウェーデンは、男性中心の高度熟練労働者を必要としていた。男性熟練労働者へのニーズは、女性労働者が公共サービス部門に集中する結果をもたらした。
機会の公平を得るためには
専門職を目指すしかない
対照的にアメリカでは、その特徴である雇用保護の弱さが、役員クラスや管理職への女性の進出を容易にした。性別にかかわらず、全労働者が企業による保護を受けられない体制のもとでは、男女の能力が同等に評価されることが可能だったのである。
労働政策が専門の研究者は、「ガラスの天井をなくすには、ジェンダー平等を追求した人的資源管理戦略が不可欠」と言う。
韓国労働研究院の分析の結果、企業が提供する教育を受けた女性ほど、管理職になる可能性は高くなることが明らかになった。組織内での教育の機会を拡大することが、女性の能力や専門性の向上にプラスの影響を与えるというわけだ(注2)。
(注1)男女で配置される職務が異なること
(注2)ソン・ミンス「女性管理職の現況と課題」、『KLIパネルブリーフ』第15号、韓国労働研究院、2018年9月17日。







