だが、韓国社会の女性人材の大多数は、専門性の高くないスキルを身につけ、不安定な雇用に甘んじている。

 2018年8月現在、男性賃金労働者1117万人における正規職労働者の割合は73.7%(823万人)。他方、女性賃金労働者887万人のうち、正規職の割合は58.6%(519万人)にとどまっている(注3)。

『働きたいのに働けない私たち』書影『働きたいのに働けない私たち』(チェ・ソンウン著、小山内園子訳、世界思想社)

 良質の職に就けて昇進の基準も明確なら、女性は、より公平な機会を手に入れることができる。学歴証明書や資格証、専門的な学位によって参入が許される職種を女性たちが好む理由である。

 教師に女性の割合がひときわ高い現象も、それと無関係ではない。女性たちは、志願者が同じ試験を受け、点数によって合否が分かれるやり方を、より公正だと考えるのだ。

 医学専門大学院(注4)、法学専門大学院(注5)などで資格証を取得して専門職、管理職を目指そうとする女性が多い現象も、同じ理由で説明できる。

 女性が特定の専門職に集中するからといって、女性の社会進出が進んでいるわけではない。むしろ、ジェンダー平等な働き口が少ないという意味に解釈すべきなのだ。

(注3)経済活動人口調査、統計庁、2018年8月。
(注4)韓国では、6年制の医学部の他に、一般大学卒業生や社会人を対象とした医学専門大学院がある。
(注5)日本の法科大学院に相当する。