そのようにして備わった力量は、特定技能(specific skills)と呼ばれる。特定の企業や産業で活用できる技能のことである。

 特定技能と対になる概念が一般技能(general skills)だ。一般技能は、どの職場でも広く活用できる技能を指す。大学教育を通じて身につけるスキルが一般技能に近いだろう。

 パソコンを活用するスキルや、組織での生活にうまく適応してコミュニケーションをとるスキルなどがそれに当たる。どこでも活用できるが、そうした能力を備えているからといって、企業の中核を担うコア人材になるのは難しい。

 企業にとって、女性は特定技能を習得させるのに適した労働力ではない。今の社会構造では、女性は結婚、出産、育児などの理由で労働市場を去る可能性が高いからだ。女性が退職すれば、損害はそのまま企業に転嫁される。

 したがって、企業は女性に投資をして重要なスキルを身につけさせようとは考えない。女性が、男性に比べて専門的な力量を伸ばす教育機会を得られない理由である。

専門性の高いスキルは
不安定な雇用では身につけられない

 さらに大きな問題は、女性自身も、特定技能の習得のために時間や費用を割かなくなる点だ。

 一般に、雇用が守られる可能性が低ければ低いほど、労働者は特定技能より一般技能を身につけようとする。

 結婚や出産でキャリアが断絶しかねない女性にとって、特定の企業だけで役立つスキルを習得することはかえって損になる。いつ転職するかわからない状況下で選択できる最善のリスク回避策が、一般技能への投資なのである。

 女性は自ら一般技能の習得に投資をし、そのせいで、いつでも代わりがきく平凡な労働者になってしまう。雇用主が女性人材を教育せず、女性も特定技能を身につけようとしない傾向は、労働市場のジェンダーギャップをより深刻にする。

強い雇用保護政策下でも
女性は疎外されることに

 もし、国のレベルで雇用を確実に保護するとなったらどうだろうか。国が、労働者は離脱しないとお墨付きを与えた場合、企業も内部の人的資源に投資を増やすというのが一般的だ。