しかしこのような反応は、実は不登校の子どもにもよく見られる現象です。

 不登校の子どもは、戦うことも逃げることもできません。学校に行かねば、というプレッシャーは世の中に非常に根強いですから、そんな簡単に学校から逃げることはできないし、学校と戦う、なんてこともできません。

 夜には「明日は学校へ行く」と言いますが、朝起こそうとすると、布団から出てきません。また意欲や思考力も失われ、ぼーっとしていたり、家でごろごろしているだけになったりします。

 自分の意志ではどうにもならないので「頭では行かなきゃと思うけど、身体が動かない」と言います。そして回復には数カ月から数年という長い時間がかかります。

 要するに、不登校状態というのは、ポリヴェーガル理論でいう、一種の凍りつき反応であり、何らかの脅威に出合ったときの防衛反応と考えられるのです。

 ただここで疑問に思う人もあるかもしれません。

 確かに、猛獣に出合うとか、凶悪犯に襲われるなどの、命の危険にさらされたときに凍りつき反応が起きるのは分かるが、学校にそれほどの脅威があるとは思えない。なのになぜ凍りつき反応が起きるのかと。

 そこでヒントになるのが、HSCについての知識です。

 HSCは、「Highly Sensitive Child」の略で、「ひといちばい敏感な子」と訳します。先ほど述べたようにひといちばい敏感なことから、先生の叱り声や友達の暴言、喧嘩、人前での発表などが苦手です。それが積み重なると、本人には大きな脅威として認知されます。それが結果として凍りつき反応を惹起(じゃっき)するきっかけとなることがあるのです。

 たとえ典型的なHSCでなくても、脅威の感じ方は人それぞれです。

 その子にとって、学校に行くのがつらい、教室が怖い、と感じるなら、それはやはりその子にとっては脅威なのだと思いますし、闘うことも逃げることもできない状況の中で凍りつき反応が起こっても不思議はないと思われます。