元フィデリティ投信の投資調査部長を務めた著者であるポール・サイさんが「S&P500」の3倍超という驚異的なリターンを生んだ米国株の投資術を初公開! ポール・サイさんが株価低迷期にエヌビディアを買い、成長を見抜けたのは、企業に潜む“成長のストーリー”を見抜いたから。初の著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』では、そんな、成長ストーリーの読み解き方から、銘柄選びの極意、買いのタイミング、暴落時の対処法、リスク管理までを体系的に解説。さらに、厳選した“10倍株”候補の8銘柄も特別公開!新NISAで投資を始めた人、日本株から米国株へとステップアップしたい人に最適な、“米国株で勝つための決定版”だ。今回は、その『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』からバーベル投資について抜粋し解説する。
ポール・サイストラテジスト
UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。外資系大手資産運用会社フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長を歴任し、12年以上にわたり株式調査に従事。2017年に独立し、40代でFIRE(経済的自立と早期リタイア)を達成。現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用しながら、メルマガ等で個人投資家への助言を行う。台湾系アメリカ人で、中国語、英語、日本語に堪能。(写真:圷邦信)
低インフレには“もう戻らない”!
今、世界経済で起きている大きな変化とは、低インフレ時代から、高インフレ時代へと移行したことです。高インフレのきっかけは、コロナ禍による世界的なサプライチェーンの寸断でした。さらにロシアによるウクライナ侵攻が事態を悪化させました。ウクライナ戦争はまだ続いているものの、コロナ禍はすでに収束しています。それでも世界が以前のような低インフレ時代に戻らないのは、ウクライナ戦争が続いているからだけではありません。
コロナ禍前の第1次トランプ政権期から、アメリカと中国の対立が目立つようになり、続くバイデン政権下でも米中対立は深まりました。米中対立の長期化により、世界的に経済安全保障の考え方が広がり、グローバル化一辺倒ではなく、サプライチェーン再構築の必要性が意識されるようになりました。
関税の影響でインフレが加速!
さらに、第2次トランプ政権による関税政策は直接的にインフレ率を押し上げ、サプライチェーンの見直しを一層加速させました。私は、今後グローバル化が止まることはないにしても、そのスピードは鈍ると思っています。
国家間の対立が少なく、関税も低く、コストの安い国で生産を行って、それを自由な貿易によって大消費地に輸出し、そこで消費が行われる――このような状況ではインフレは高進しにくいでしょう。実際、しばらく前の世界経済はおおむねそのような仕組みで回っていました。しかし、こうした流れが崩れ始めています。
さらに、コロナ禍で各国政府が財政支出を拡大した結果、債務負担を実質的に軽減するために、あえてインフレを容認する政策を取る可能性も高まっています。こうした要因から、世界経済はもうコロナ禍前のような低インフレの時代には戻らないと考えた方がいいでしょう。
日本も脱デフレの時代に! エネルギー株が上がる!
とても長い間、デフレが問題視されてきた日本ですら、今やインフレが問題になっています。これも、世界がインフレ時代に突入した象徴的な出来事のように思えます。高インフレ時代が続くのであれば、実物資産であるコモディティに追い風となり、石油株などのエネルギー株にとって有利な環境と言えるのです。
また、インフレが進めば金利は上昇します。テクノロジー株は高い成長力が魅力ですが、金利が上がりすぎるとマイナス要因になります。その一方で、金利が上がっている時はインフレが進んでいるはずですから、それは石油株などのエネルギー株にはプラス要因になります。
だから強い! 「テック×エネルギー」のバーベル戦略
つまり、「インフレと金利」という軸を通じ、テクノロジー株とエネルギー株は相互補完的に機能するのです。そのため今後5年、10年、20年という長期にわたって、「テクノロジー株&エネルギー株」のバーベル戦略は有効に機能すると私は考えています。
さらに言えば、バーベル戦略を持ち出さなくても、そもそも株式はインフレに強い資産です。これは忘れてはならない重要な点です。高インフレ時代に入ったのなら、長期的な資産形成のために、株式投資は欠かせない存在なのです。
※本稿は『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。









