元フィデリティ投信の投資調査部長を務めたポール・サイさんが、「S&P500」の3倍超という驚異的なリターンを生んだ米国株の投資術を初公開! ポール・サイさんが株価低迷期にエヌビディアを買い、成長を見抜けたのは、企業に潜む“成長のストーリー”を見抜いたから。初の著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』では、そんな、成長ストーリーの読み解き方から、銘柄選びの極意、買いのタイミング、暴落時の対処法、リスク管理までを体系的に解説。さらに、厳選した“10倍株”候補の8銘柄も特別公開! 新NISAで投資を始めた人、日本株から米国株へとステップアップしたい人に最適な、“米国株で勝つための決定版”だ。今回は、その『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』から3年でS&P500の3倍超の成績を達成できた理由を抜粋し解説する。

開始わずか3年で資産3.4倍達成! 「なぜS&P500に勝ち続けられるのか」その投資術を公開フィデリティ投信の日本と中国の調査部長を歴任したスゴ腕のストラテジストが語る米国株の攻略法とは?Photo by Kuninobu Akutsu

開始わずか3年で推奨銘柄群が3.4倍になった!

 私は2022年8月から、メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」を配信しています。配信内容は投資戦略やマクロ経済の見通し、アメリカで話題になっている最新情報、さらには読者からの質問への回答など多岐にわたります。その中でも米国株を中心とした個別銘柄推奨は、このメルマガの中心的コンテンツです。

 推奨する銘柄はいずれも長期投資を前提としたものです。これまでいったん推奨した銘柄を完全に売却したケースは、他社による買収が決まり、株価が急騰した銘柄に限られています。推奨銘柄の決算発表など重要なイベントがあれば、その解説も積極的に行っています。このメルマガの推奨ポートフォリオの成績を見てみましょう。

 上のグラフは、推奨ポートフォリオの成績の推移を示しています。2022年8月のメルマガ配信開始から2025年8月2日までの3年間(36カ月間)で推奨ポートフォリオの成績は約3.4倍(+240%)になっています。比較対象として、S&P500連動ETFの成績の推移を載せており、同期間のS&P500連動ETFの成績は約70%。つまり、この推奨ポートフォリオはS&P500の3倍強の成績をあげていることになります。

下がっても崩れない! “鉄壁ポートフォリオ”の作り方

 次に成績の良さだけでなく、推奨ポートフォリオのボラティリティ(値動きの大きさ)などについても見てみましょう。まず、推奨ポートフォリオの値動きは、比較対象としたS&P500連動ETFよりも大きくなっています。

 私が、最も注目しているのは高い成長性を持つテクノロジー株です。こうした成長セクターの株は一般的に値動きが大きくなりがちです。そのため、この推奨ポートフォリオの値動きが大きかったのは自然な結果と言えます。とはいえ、最終的に得られたリターンの大きさを考えれば、この値動きの大きさは十分に許容できる範囲内だ、と考えています。

 値動きがある程度大きいと、個々の銘柄の下げ局面も相応に大きくなります。その後、さらに上昇するケースが多いにもかかわらず、大きく下落してしまうと、強気を保てない投資家は、投資をやめてしまいがちです。

 注目すべきは、私の推奨ポートフォリオは、S&P500連動ETFに比べれば値動きが大きいといっても、途中で成績が大きく落ち込んでいない点です。短期的な調整局面があっても、成績が大きく落ち込むことはなく、上昇トレンドを維持してきました。これなら、先ほど述べた通り、ほぼどのタイミングで、この推奨ポートフォリオに投資しても利益を得られたことになります。このような安定感は、長期投資を志向する投資家にとって非常に魅力的な特徴と言えるでしょう。

ローリング・リターンが証明! 「持っていれば勝てる」理由

 ポートフォリオの成績を評価する指標の1つに「ローリング・リターン」があります。これはリターン計測期間の起点と終点を少しずつずらしながら、一定の保有期間におけるすべてのリターンを計算したものです。推奨ポートフォリオの6カ月間のローリング・リターンを計算すると、ほとんどの期間で常にプラスとなっていました。これは、このポートフォリオを保有する投資家にとって、半年間の保有期間中に損失を被る可能性が極めて低いことを示しています。

下落に強い! S&P500に勝ち続けるポートフォリオ

 また、月次で見て、マイナスの成績になった月が少ないことも、この推奨ポートフォリオの強みです。今回分析した38カ月間のうち、S&P500連動ETFが月次でマイナスとなったのは13回でした。一方、推奨ポートフォリオがマイナスとなった月は9回にとどまり、下落局面での安定感がうかがえます。さらに、推奨ポートフォリオの成績が、S&P500を下回った月は38カ月間でわずか8回、全体の5分の1程度にすぎません。

 これらの点も、長期的な資産形成を目指す投資家にとって、安心して投資できる要素と言えるでしょう。

テクノロジー+エネルギーの“バーベル戦略”が効いた!

 実は、この推奨ポートフォリオは、テクノロジー株を重視していますが、エネルギー株にも投資しています。これはいわゆる「バーベル投資」の一種であり、この戦略がリターンに対して値動きの大きさを比較的抑えている要因の1つになっていると考えられます“良い投資ストーリー”を持っている優れた会社が安くなった時に買うだけ

 このように安定して好成績を上げる推奨ポートフォリオに組み入れる銘柄を、私がどう選び、どのようなタイミングで買い推奨しているのか。読者のみなさんが気になるのは、まさにこの点ではないでしょうか。私の株式投資術を3つのステップでまとめると、以下の通りです。

ステップ1:良い投資ストーリーを持つ優れた会社を見つける

ステップ2:優れた会社をみんなが悲観視し、株価が安い時に買う

ステップ3:買ったらそのまま持ち続け、あとは何もしない

 ずいぶんシンプルな内容で、拍子抜けしてしまった人もいるかもしれません。とはいえ、「良い投資ストーリーを持つ優れた会社を見つける」といっても、具体的にどうやって探せばいいのか、疑問に思う人もいるでしょう。

“みんなが悲観視している時”は絶好の買い場だ!

 また、「みんなが悲観視している時」は絶好の買い場なのですが、実際にそのような状況になると、怖くて買えない人も少なくないと思います。

 そして最後に「あとは何もしない」と書きましたが、実際には暴落相場のような局面で株を売らずに持ち続けることは、多くの人にとって決して簡単ではありません。急激な下落局面では冷静さを失いがちで、つい株を手放してしまう人も少なくないのです。

ストーリーが続く限り持ち切る!

 ただし、私の言う「あとは何もしない」とは、文字どおり“何もせずに放置する”という意味ではありません。相場の上下に振り回されず、企業のストーリーが生きている限り、腰を据えて保有し続けるという姿勢を指しています。

 これこそが、長期投資の成果を最大化するための重要なカギなのです。

※本稿は『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。