いま世界150万部突破・39か国刊行のベストセラーとなっているのが『STOP OVERTHINKING ── 思考の無限ループを抜け出し、脳が冴える5つの習慣』だ。Amazon.comでも13,000超のレビューで世界が絶賛する話題書についてライターの照宮遼子氏に寄稿いただいた。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

【残念な正月休み】「何もしない贅沢」を選んで後悔する人の特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

「何もしないほど、心が休まる」と思っていた

 今年の年末年始は、多くの人が9連休になるという。
 世の中では「何もしない贅沢」という言葉がもてはやされるけれど、私はそれを実践して、むしろ疲れてしまった経験がある。

 当時の私は公務員。
「忙しかったから、今度の正月こそ何もせずに過ごそう」と決め、実家に帰った。

 食べて、寝て、なんとなくテレビを眺め、初詣に行く。
 そんなありふれた年末年始を数日繰り返したころ、胸の奥に妙な焦りが湧いた。

「このままでいいのか」
「手持ち無沙汰で飽きてしまった」

 何もしていないのに、心の中はざわついていた。
 あの頃は、同僚と愚痴を言い合う飲み会でさえ、いいガス抜きになっていたのだと今になって思う。

 やることが何もない時間は、決して「リラックス」ではなかった。
 静かな時間の中で、心の奥に眠っていた不安が、少しずつ顔を出してきたのだ。

「休むこと」と「止まること」は違う
 完全に止まると、心は勝手に不安をつくり出す。

 私が感じたあの正月の焦燥感は、まさにそのサインだった。

世界的ベストセラーの教え

 この年末年始も日本で話題となっている、全世界150万部突破のベストセラー『STOP OVERTHINKING』の著者ニック・トレントン(行動心理学修士)もこう述べている。

ストレスが少なすぎるのも良くない。
人間は何も刺激がないと、退屈してストレスを感じるようになる。
つまり、ストレスがまったくない環境ではなく、適度なストレス環境にいると充実した生活を送れるのである。

――『STOP OVERTHINKING』(P.31)より

 この一節を読んだとき、正月休みに感じた焦りの理由がようやく腑に落ちた。
 私はストレスを完全にゼロにしようとして、逆に心のバランスを崩していたのだ。

「何もしない贅沢」が
後悔に変わる本当の理由

 刺激がまったくない状態は、心の張りを失わせる。
 本当に必要なのは、「何もしない」ことではなく、自分を立て直すために「整えて休む」ことだ。

 軽い予定をひとつ入れる、短い散歩をする。
 そんな小さな刺激が、心を安定させるリズムになる。
 休み方を選ぶだけで、不安の数まで変わってくるのだ。

 去年の年末年始は、実家に帰らず、久しぶりに自分の時間を過ごした。
 おせちを手づくりし、初日の出を見に出かけた。
 その数日間は、静かではあったが、心地よい張りがあった。

 本書を読んで気づいたのは、「完全に止まる」よりも、「ほどよく動く」ほうが心は落ち着くということ。

 休むことは、止まることではなく、整えること。
 その感覚を知ってから、休み方がうまくなった気がする。

(本稿は『STOP OVERTHINKING ――思考の無限ループを抜け出し、脳が冴える5つの習慣』に関する特別投稿です)