くたびれた非正規社員の主人公を
二宮和也が好演

 その「異変」が、ポスターの目が動いたり、血が流れてきたり……といったものなので、ホラー映画に分類しても良いだろうと思われる。

 見る前の興味は、「ほぼ地下鉄の通路内しか映らない映画を飽きずに見ることができるのか」という点だった。ヒットしているのだからそれなりに面白いのだろうとは思ったが、予想以上にあまりにも通路しか出てこなかった。しかしこれが、人がやっているゲームを横から見ているようにハラハラドキドキで楽しめるのである。ゲームの実況中継を行う配信者が人気を集める現代ならではの映画だ。 

 根底にあるテーマは、日常の些細な違和感に足を止めずスルーし続けるといつの間にか自分を見失う、というところであろうか。こう書くと説教くさいのだが、くたびれた非正規社員の主人公を演じる二宮和也にリアリティがあり、この時代を生きる30代40代あたりの心理をうまく突いている。

 誰でも「いい人」でありたいけれど、日常を生きることはシビアで、簡単に「いい人」でいさせてはくれない。それでも……という映画である。このあたりの奥行きが、若年層だけではなく幅広い層からの支持を集める理由となっているのかもしれない。

3 ティーン向けだがアラフォーが見ても胸熱の『見える子ちゃん』

 完全にノーチェックだったが、意外な良作であるというレビューを読んで足を運んだ。

 本作が面白い点の一つは、「幽霊は暗くて人のいないところに出現する」というセオリーを完全に無視していることだ。「見える子」になってしまった女子高校生、四谷みこ(原菜乃華)が主人公で、彼女は昼間の教室内でも、放課後の帰り道でも、とにかく見えてしまう。