すぐに自分を責める人が陥っている「思考停止」の罠
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【精神科医が教える】「自分を責める」のが無意味な理由…本当にすべき「たった1つのこと」Photo: Adobe Stock

自分を責めてしまう癖を手放し
前に進むためのヒント

今日は、「どうしても自分を責めてしまい、クヨクヨしてしまう」という人に向けたアドバイスをお届けします。

「そんなに悪く考えなくていいよ」と周りに言われたり、自分でもそう思おうとしたりしても、気づけば「やっぱり自分が悪かったのではないか」と思考が戻ってしまう。そんな苦しさを抱えている人は少なくありません。

以前、自分の心を守るために他人を攻撃してしまう「他責」の人とは距離を置いたほうがいい、というお話をしましたが、今回は「つい自分を責めてしまう(自責)」人について、その心理と対策をお話しします。

「自分を責める」ことは
心の防衛反応

実は、「自分自身のことを悪いと思ってしまう」こと自体が、心理学でいう「防衛機制」の1つであると考えられます。

防衛機制とは、現実をそのまま受け入れると心が落ち着かないとき(認知的不協和が生じたとき)、葛藤を処理して心を安定させようとする心の働きのことを指します。

他責の人→「全部あの人が悪い」と他人を責めることで、自分は悪者にならずに済み、心を落ち着かせようとする
自責の人→「自分が悪い」と自分を責めることで、ある意味で決着をつけようとする

つまり、自分を責めるという行為も、他人を責めるのと同様に、一種の“心の守り方”なのです。

自分を責めることで
現実から目を逸らしていないか

「自分を責める」ことの問題点は、「責めた先に何もない」ということです。

「自分が悪かったんだ」とクヨクヨ悩むことで、自分自身は苦しい思いをします。しかし、そこで思考が止まってしまうため、現実を受け入れたり、状況を変えたりするための行動ができなくなってしまうケースが非常に多いのです。

これは、「何かあったときに自分を責める」という思考の癖(ルート)ができあがっている状態です。自分を責めることで「自分はこの問題に対して悩み、苦しんでいる(=何かアクションをしている)」という気になってしまい、本来向き合うべき現実の問題そのものを見つめなくて済むという側面があります。

「誰が悪いか」という
犯人探しをやめる

では、どうすればよいのでしょうか? まず前提として、「責める」という考え方自体が、あまり合理的ではありません。

自分であれ他人であれ、「誰のせいか」を決めて悪者を設けたところで、それが客観的に証明できるわけでもありません。仮にどちらかが「悪者」だと確定したとしても、「だから何?」という話です。

他人を責める→相手を攻撃して終わり
自分を責める→「申し訳ない、消えてしまいたい」と思って終わり

これでは何も生産性がありません。問題は解決せず、ただ「責める」というストーリーをたどって心を落ち着かせているだけに過ぎないのです。

「どうすれば良くなるか」
に行動をシフトする

大切なのは、誰が良いか悪いかという視点をいったん脇に置き、「ありのままの問題」を見つめることです。問題が起きているからこそ、気持ちの置き場がなくて「責める」という発想になります。しかし、本当に必要なのは「悪者探し(犯人探し)」ではありません。

「何をしたら、どういう風にしたら、物事が良くなるか」――ただそれだけを考えるべきです。例えば、企画したイベントにお客さんが来なかったとします。

他責の人→「スタッフの宣伝が悪かった」と責める
自責の人→「私の力不足だ」と落ち込む

どちらも、「なぜ来なかったのか」「次はどうすればいいか」という具体的な対策には頭が回っていません。

「責める」という感情が湧いてきたら、「おっと、これは防衛機制が働いているな」と気づき、その感情を横に置いてください。そして、「何をしたら問題が消えるか(良くなるか)」と考え、試行錯誤してみましょう。

これが、自分で考えて行動する「自分軸」にもつながります。

責めても意味がない

自分を責めてしまう人は、急には変われないかもしれません。「また責めてしまった」と思っても大丈夫です。ただ、「責めても意味がない」ということだけは覚えておいてください。

常に「どうしたら良くなるか」を考えて行動していれば、人生は楽しくなり、物事もうまくいき始めます。いつの間にか、「責める」という発想自体が消えているはずです。

※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。