「楽しみながら賢くなれる、全世代におすすめの一冊」
と話題になっているのが、書籍『もっと頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』(野村裕之著、ダイヤモンド社刊)だ。Google、Apple、Microsoftといった超一流企業の採用試験でも出題され、“地頭力”を問う知的トレーニングして注目される「論理的思考問題」の傑作を紹介している。「家族みんなで楽しんでます」「本を読まないうちの子が夢中になっていた」と全世代から反響を得ている同書から、「事実のつながりに気づける人」だけが解ける問題を紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

「頭のいい人たち」が夢中になっているビジネス書で紹介されている思考トレーニング『同姓同名フライト』とは?イラスト:ハザマチヒロ

事実と事実に隠されたつながりに気づけるか?

 状況を俯瞰してみると、関係のないように思えていた事実同士のつながりが見えてきたりします。
 次の問題、事実と事実の間に隠された関係性に気づけるでしょうか。

「同姓同名フライト」

 スミス,ジョン,トムという3人がいる。

 飛行機の操縦士、副操縦士、乗務員だが、誰がどの職業かはわからない。

 この3人が担当する飛行機の中に偶然、3人と同じスミス,ジョン,トムという名の乗客がいる。


「客のトムはニューヨークに住んでいる」
「操縦士はニューヨークとロサンゼルスの中間に住んでいる」
「客のジョンの年収は700万円」
「スミスはビリヤードで副操縦士に勝てる」
「客の1人は操縦士の隣家に住み、操縦士のちょうど3倍稼いでいる」
「操縦士と同じ名前の乗客はロサンゼルスに住んでいる」

 
さて、乗務員の名前は?

「頭のいい人たち」が夢中になっているビジネス書で紹介されている思考トレーニング『同姓同名フライト』とは?

イラスト:ハザマチヒロ

 なんだこの問題は……。
 わかっている情報はたくさんありますが、多すぎて混乱しますね。

 しかも、いっけんすると手がかりにならなそうなものがチラホラ含まれています。年収とか、ビリヤードが強いとか、これ、何かの役に立つ情報なのでしょうか?
 ただでさえ情報が多すぎて何から考えればいいのかわかりにくいんだから、無駄な情報は載せなくていいのに。

 でも、こういった情報も真実を導くためのヒントになるのでしょうか……?

多すぎる情報を整理する

 はい、どう見てもこの問題は情報が盛りだくさんすぎます。
 そこで以下のような表に、わかっている情報をまとめてみましょう。

『もっと!!頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』掲載の図

 まず1つ目の情報は、こちら。

 “客のトムはニューヨークに住んでいる”

 これは確実にヒントになりますね。
 なので、「ニューヨークに住んでいる客はトム」であると確定します。

『もっと!!頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』掲載の図

 ……そして、多くの人はここで手が止まります。
 次にわかっている情報が、こちら。

 “操縦士はニューヨークとロサンゼルスの中間に住んでいる”

 ニューヨークとロサンゼルスは、北海道─沖縄間の距離の2倍近く離れています。
 ということは、操縦士とトムが住んでいる場所は遠く異なる……

 この情報は何かのヒントになりそうですが、誰が操縦士かわからない状況では、何も情報を得られません。
 そして、他の情報は「年収」とか「ビリヤード」とか「隣家に住んでいる」とか、わけのわからないものばかり……
 ここから先、6人の正体を特定する手段がないように思えます。

突破口を見つけられるか

 ですが論理的思考問題である以上、解けるヒントはあるはず。
 考えてみます。

 うーん。
 ……そういえば、年収に関する文章がいくつかありましたね。

 “客のジョンの年収は700万円”
 “客の1人は操縦士の隣家に住み、操縦士のちょうど3倍稼いでいる”

 これがムダな情報じゃないとしたら、どんな意味があるんでしょう。
 そうですね……。

ちょうど3倍」という厳密な表現、ちょっと気になりますね。
 そしてよく考えてみると、1つ目の方の文章にはこうあります。

 “客のジョンの年収は700万円”

 ……あ、700万円は3では割り切れない数ですね。
 操縦士の給料がいくらであっても、それを3倍して700万になる数字なんて存在しません。
 つまり年収が700万円の客ジョンと、操縦士の家の隣に住んでいる客は「別人」ということではないでしょうか。

 とすると…

 操縦士の家の隣に住んでいる乗客はジョンではない

 と判明します。

 では、ニューヨークとロサンゼルスの中間地点にあるという操縦士の家の隣に住んでいる乗客は、いったい誰なのでしょう?

 乗客のジョンは、操縦士の家の隣には住んでいない。
 乗客のトムが住んでいるのは、ニューヨーク。
 ニューヨークとロサンゼルスは遠く離れているため、この2人のどちらかが操縦士の家の隣に住んでいることはありえない。

 ということは、操縦士と同じくニューヨークとロサンゼルスの中間地点に住んでいるのは、客のスミスです。

『もっと!!頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』掲載の図

あとは1つずつ事実を明らかにするだけ

 よし、突破口が見えました。
 あとはもう一瞬です。
 問題文に、こうあります。

 “操縦士と同じ名前の乗客はロサンゼルスに住んでいる”

 住んでいる場所がまだわかっていない乗客はジョンだけなので、この「ロサンゼルスに住んでいる乗客」はジョンのことだとわかります。
 そして、その客ジョンと同じ名前の人が、操縦士です。

『もっと!!頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』掲載の図

 そして、

 “スミスはビリヤードで副操縦士に勝てる”

 とあるため、スミスは副操縦士ではありません。
 ジョンは操縦士だと確定しているため、副操縦士はトムしかありえません。

『もっと!!頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』掲載の図

 そして残っているスミスが、乗務員だと確定します。

『もっと!!頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』掲載の図
<正解>
 乗務員はスミス

「思考」のまとめ

 問題と関係のないように見える情報がたくさんありましたが、ちゃんとすべての情報をヒントにすることで答えを導き出せました。

 とくに、最初のとっかかりとなったのが「年収」に関する情報でしたね。それ1つだけではヒントにならないような情報も、全体を見渡して、同じ性質の情報同士で組み合わせてみると、別の真実が浮かび上がってきたりします。
 
そうやって糸口を見つけて1つでも事実を確定できると、その事実がまたヒントになって次の事実へとつながります。このように徐々に真実を明らかにしていけることが、論理的思考の最大の強みなのだと思います。

POINT
・事実の全体像を俯瞰できると、共通する点などが見つかる
・共通する点を関連づけたりすることで、また別の事実が見えてくる

(本稿は、『もっと!! 頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から抜粋した内容です。書籍では同様の「読むほどに賢くなる問題」を多数紹介しています)