ベストセラー『「悩まない人」の考え方』著者の木下勝寿氏が「マーカー引きまくり! 絶対読むべき一冊」と絶賛する本がある。『スタートアップ芸人 ―― お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』だ。著者の森武司氏は、2005年にFIDIAを創業して以来、18年連続増収増益を達成。年商146億円の企業へと成長させた。その成功の裏にはどんな原動力があるのか?
今回話を聞いたのは、森氏と同じく元芸人であり、現在はFIDIAグループのグループホーム事業「FIDIA DAYS」の社長を務める水上雄一氏。人気芸人・山里亮太氏の元相方であり、ドラマ『だが、情熱はある』に登場する宮崎君のモデルとなった人物だ。「毎日30個の宿題」という一見無茶な修行が、いかにして経営者としての土台をつくったのか。当時の驚きのエピソードを語ってもらった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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山里亮太から毎日出された「宿題」とは?
――山里さんから「1日30個、不細工イジリのワードを考えてこい」という宿題が出されたと聞きましたが、本当ですか?
水上雄一(以下、水上):本当です。当時のお笑いでは、「ボケだけではなく、ツッコミでも笑いをとる」というスタイルはまだあまり浸透していませんでした。でも、僕らはそこに挑戦しようとしていたんです。
「なんでやねん」と返すだけじゃなく、ツッコミの一言そのものを面白くする。後に「南海キャンディーズ」がそういった掛け合いをすごくやっていましたけど、当時の僕らのコンビ「侍パンチ」は、まさにその形を模索していた時期でした。
「王道を知らない」が逆に武器に
――「面白いツッコミ」という発想は、どこから生まれたんでしょうか?
水上:正直、当時はお笑いのことを何もわかっていませんでした。漫才とコントの違いもよく理解していなかったんです。
でも逆に、それがよかったのかもしれません。王道の型に縛られなかったので。
たとえば漫才のツッコミなら「なんでやねん」ですけど、コントでツッコむときは「なんでやねん」とは言いませんよね。
僕は、ダウンタウンさんの『夢で逢えたら』などのコント番組を見て育ったので、「ツッコミ側も面白いことを言う」というイメージが強かったんです。
その話をしたら、山里くんも同じ考えを持っていて、「じゃあそれをやってみよう」と。
そこから「この2人の見た目だったら、不細工イジリは絶対必要だよな」となりまして(笑)。
それで、「不細工イジリのパターンを何十個も考えてこい」というのが毎日の宿題になったんです。
山里亮太がツッコミではなく「ボケ」だった時代
――そのとき、水上さんがツッコミ担当だったんですか?
水上:そうです。いまでは山里くんといえばツッコミの人というイメージですが、侍パンチではボケ担当でした。
最初はどちらがボケかを明確に決めていませんでしたが、やっていくうちに「この見た目でツッコミは違うやろ」という流れになった感じです(笑)。なので、ツッコミのワードは全部僕が考えていました。
――ネタの台本も水上さんが担当されていたんですか?
水上:いえ、ネタは一緒に書いていました。
当時は芸人の裏側を知る機会が少なくて、誰がどうネタをつくっているのかもわからなかった。お笑い番組といえばコントかトーク番組ばかりで、「ネタを書くってどういうこと?」という状態から始まったんです。
だから、「どっちが書くか」というより、2人で試行錯誤しながら一緒に書いていった。どうやってやったかはもう覚えていませんが、教科書になるものもない中で、たぶん4本くらいは書いたと思います。
漫才とコントの違いもわからないところから、一緒にネタが書けるまでになったと考えると。毎日出される宿題には、もう本当に、鍛えられたなあと思います。
経営者になってから生きたこと
――ちなみに、「不細工イジリ」はどんなワードを考えていたんでしょう?
水上:いや、もう全然覚えてないです(笑)。
でも、あの経験は確実に今の自分をつくっています。
毎日30個、何かを考え続けるって、すごく地味で泥臭い作業なんです。
でもそれを続けることで、「質より量をこなした先に質が生まれる」ということを体で学べた。
経営も同じなんですよね。目の前の課題に毎日向き合って、小さな改善を積み重ねる。派手さはないけど、その積み重ねが組織を強くしていく。山里くんとの日々は、僕にとって最高のビジネス修行だったのかもしれません。
――『スタートアップ芸人』には、そうした「泥臭い努力」のエピソードがたくさん詰まっていますね。
水上:そうですね。僕らの会社は、派手な成功物語ではなく、地道な積み重ねで築いてきた会社です。でも、その過程で学んだことは、どんな仕事にも通じると思っています。
「仲間と一緒に、毎日少しずつ前に進む」。それが僕らのやり方です。この本が、同じように悩みながら働いている人の参考になれば嬉しいです。
(本書は『スタートアップ芸人 ―― お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』に関する特別投稿です。)










