『「子供を殺してください」という親たち』原作:押川剛 漫画:鈴木マサカズ/新潮社
さまざまなメディアで取り上げられた押川剛の衝撃のノンフィクションを鬼才・鈴木マサカズの力で完全漫画化!コミックバンチKai(新潮社)で連載されている『「子供を殺してください」という親たち』(原作/押川剛、作画/鈴木マサカズ)のケース6『「ふつう」の家庭に育つ闇』から、押川氏が漫画に描けなかった登場人物たちのエピソードを紹介する。(株式会社トキワ精神保健事務所所長 押川 剛)
「枠」から我が子がはみ出したら親はどうすべきか
トキワ精神保健事務所の「精神障害者移送サービス」にはさまざまな相談が舞い込む。
今回は、元交際相手の女性に刃物を向けてしまったという宝田由伸(23歳・仮名)の両親からの相談だ。逮捕されたにもかかわらず、いまだにストーカー行為をやめられない息子をどうにかしたい…というのが今回のストーリーだ。
警察庁によると、令和7年におけるストーカー事案の相談等件数は2万2881件。前年から3314件増加し、依然として高い水準で推移していることがみてとれる。
私の事務所でも、「我が子がストーカーになってしまった」という相談を受けることは少なくない。対象は異性に限らず、例えばクビになった勤務先に執着し、上司や同僚に嫌がらせを続けているという相談もある。
私に相談する時点で、家族は本人を精神科医療につなげたいと考えている。実際にこのようなケースのなかには、精神疾患を起因とするセルフネグレクトや自傷行為が行われていることも多く、医療の助けを必要とする場合がほとんどだ。
もちろん私も、精神科医療につなげることを前提に依頼を受ける。しかしそれ以前に、親と子が命の問題にきちんと向き合う必要があると考えている。
我が子が誰かに向かって、「殺す」「死ね」「相手を殺して自分も死ぬ」など物騒な言動を行っているのだ。
親は子どもの異変に気付いたとき、「なぜ」と理由を探したがる。しかし子どもが命に関わる言動をとったときには、問答無用で止めなければならない。説諭がきかないなら、それこそ体を張ってでも阻止するのが親ではないか。自分たちでは止められないと思うなら110番通報をして警察を呼んでもいい。
命に関わる言動は、我が子から親への最大のSOSだ。だからこそ、「馬鹿なことを言うな!」「いい加減にしろ!」と、取っ組み合いをしてでも止める必要があると思う。
しかし現実には、そのような行動がとれない親が多い。
私なりに理由を考えてみると、今回のマンガのケースの両親は、双方とも見るからに真面目で普通の方だった。だからこそ、自分たちが歩んできた「枠」から我が子がはみ出したときに、応用が利かず、ただあたふたするしかなかった。
本来なら子どもが「枠」をはみ出した言動をしている以上、親にも「枠」を飛び出す対応が求められるはずだ。特にその刃が第三者に向かっている場合、「止めない」こと自体が犯罪を許容していることになりかねない。
命に関わるようなトラブルに進展しかねないケースに携わるなかで、非常事態にただ右往左往するしかない親の非力さ・弱さに愕然としてしまう。親の不作為こそ、一見「普通」に見える家庭に潜む、本質的な闇ではないだろうか。
この闇のなかで、家族は精神科医療に一筋の希望を見出す。しかしそういった公の支援を利用したいならなおのこと、親はまず、子どもの命の問題に真摯に向き合うべきである。
現代社会の裏側に潜む家族と社会の闇をえぐり、その先に光を当てる。マンガの続きは「ニュースな漫画」でチェック!
『「子供を殺してください」という親たち』原作:押川剛 漫画:鈴木マサカズ/新潮社
『「子供を殺してください」という親たち』原作:押川剛 漫画:鈴木マサカズ/新潮社







