米企業の解雇通告に新手法 失敗例も続々Illustration:Daisy Korpics/WSJ, Getty Images

 米アマゾン・ドット・コムが先月、1万4000人の人員削減を開始すると、一部の従業員は自宅でテキストメッセージを通じて自分の運命を知った。メッセージは、電子メールの受信箱を見るようにと指示する内容だった。

 従業員を待っていたのは「アマゾンでのあなたの役割に関する最新情報」という件名のメールで、「残念ながらあなたの役割は廃止されます」と書かれていた。会社の指導役か人事担当者との任意の会合に参加して質問できるとも記されていたが、一部の従業員はその時点で「その必要はない」と判断した。

 このテキストメッセージと電子メールを組み合わせた素早い通知は、雇用主が従業員を切り捨てる際に使う、常に変化し続ける手法がまた新たな進化を遂げたことを示している。新型コロナウイルス流行時には、ズームで個別のミーティングを行ったり、カレンダー機能を通じて突然、人事担当者とのミーティングに招待したりしてレイオフ(解雇)を通知するという方法が登場した。今、企業が狙っているのは、レイオフをさらに効率的に行いながら、見苦しい場面が世間の目に触れたり従業員が集まって感情をあらわにしたりする機会を減らすことだ。

 ガートナーのマネージング・バイスプレジデントで、リストラのリスクを最小限に抑える方法を企業に助言するジョージ・ペン氏によると、「多くの従業員にできるだけ早く一斉に」レイオフを伝えて会社のメッセージを管理し、労働者に対するストレスを抑制することが、新たな通知方法の目的だという。

 従業員に失職を伝える良い方法というのはあるはずもないが、「結局のところ、企業は一番ましな選択肢を探している」とペン氏は話した。

 レイオフを通告された多くの従業員にとっては、ましな通知のし方などというものはなく、新たな通知方法は批判を浴びている。「その方法でいいと誰が思ったのか」。ビジネス向け交流サイトのリンクトインのあるユーザーはアマゾンのレイオフについてそう書き込んだ。「人を解雇する際に尊厳を持って行えば、その企業の価値観は本物であることが証明される。それをテキストメッセージで行ったら? その価値観はただの言葉に過ぎなかったことを証明するだけだ」