さらに2017年度の二次試験には、こんな問題が出た。
《あなたがいま試験を受けているキャンパスに関して、気づいたことを一つ選び、それについて60~80語の英語で説明しなさい。》
大学入試は暗記問題から
思考力が求められる問題へ
ここまでくると、問われているのが知識や応用でないのは一目瞭然だろう。
語彙や、その応用としての文法を覚えていることは、もはや「当たり前」。試験でそれ自体が問われることはなくなっていく。
代わりに、自分が持っている知識を俯瞰的に見て有効なものを選び、組み合わせて統合したうえで、「解答」としてアウトプットする。そのような、高度な「思考力・判断力・表現力」が求められる問題へと移り変わってきたのだ。
大学の入試問題がこんなふうに変化してきた背景には、もちろん社会の動向が深く関係している。
経済産業省が公表しているレポート「数理資本主義の時代」では、AI、ビッグデータ、量子コンピュータなどの「デジタル技術」が未来の行方を左右する「第四次産業革命」の時代には、「具体的な課題を抽象化・一般化することによって俯瞰し、統合的に解決する能力が以前にもまして強く求められる」と指摘されている。
先に引用した英作文の問題(2017年度)で求められているのは、キャンパスで見たもの・聞いたことという具体的な課題を、限られた語数の英文へと落とし込み、抽象化・一般化された解答へ昇華する作業に他ならないが、そのような「抽象化・一般化の能力は、まさに数学によって実現されるものである」と同レポートは指摘する[7頁]。
数学で培った思考力が
AI時代の必須スキルとなる
さらにAIについてはこうも記している[2頁]。
《既存のAIのエンジンをビジネス等(ママ)活用するだけであれば、数学の基礎的な能力や知識さえあれば十分であり、高度な数学の能力は必ずしも必要ないのかもしれない。むしろ、プログラミングやビジネスセンスなど、数学以外の能力が求められよう。
しかし、AIの発達に伴って、数学の知識や能力の必要性はますます高まり、ビジネスや社会により直接的に活用されるようになってくる。例えば、数学の能力は、データ分析のみならず、モデリングやシミュレーションにおいても発揮される。特にAIと人間との協調・協働においては、数学がAIの制御をはじめ、学習データや推定結果の信頼性を高めるために大いに必要となる。》







