愛知県の小学校に30年以上勤めてきた校長先生は、次のように話していました。

「昔は学校で暴力を振るう子は、どちらかと言えば成長が早くて身体が大きなガキ大将的な子か、家庭に問題がある情緒不安定な子といった印象でした。こういう子たちは、暴力が悪いことだと自覚しているので、先生の目の届かないトイレや体育館の裏で問題を起こすことが多かった。人前でやるのは、怒りが収まらなくなった時とか、わざと不特定多数の人に対して自分の力を誇示しようとする時だけです。

 今はかなり変わりましたね。精神的に未熟なまま小学校に上がってきた子が、朝礼中だとか、授業中とかにいきなり激高してクラスメイトに手を上げるといったことが増えています。一言でまとめれば、“幼稚な暴力”が目立っているのです。

 普通は小学生ともなれば、それなりの理性を持ち合わせるものです。ちょっと気に入らないことがあっても、グッと感情を押し殺し、相手とぶつからないような物言いをしたり、行動を取ったりします。

 でも、保育園や家庭で、そういう力を身につけず、そのまま小学校に上がってくる子が増えているのです。30年くらい前と比べて、明らかに子どもの精神年齢が2歳くらい低くなっているというか、幼稚になっている。低学年に暴力行為が増えている要因の1つは、間違いなくこういう未熟な子どもが増加していることにあるでしょう」

些細なことで逆上し
相手に殴りかかり物を壊す

 校長先生が話すように、昔の子どもの暴力には大きく2つのパターンがありました。

 1つが、身体が大きな子が、人間関係がこじれた際に、腕力で簡単に解決しようとするケース。もう1つが、家庭の問題などでストレスを抱えている子が、それを晴らすために身近にいる弱い子に手を上げるケースです。

 今もこうした子はいるにはいますが、それとは別に新しく増加しているのが、「未熟な小学生による幼稚な暴力」なのです。

 保育園や幼稚園に通う、未就学児のいざこざを思い描いてみてください。