世界の富裕層たちが日本を訪れる最大の目的になっている「美食」。彼らが次に向かうのは、大都市ではなく「地方」だ。いま、土地の文化と食材が融合した“ローカルガストロノミー”が、世界から熱視線を集めている。話題の書『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著)から、抜粋・再編集し、日本におけるガストロノミーツーリズム最前線を解説。いま注目されているお店やエリアを紹介していきます。
Photo: Adobe Stock
なぜ、日本は食レベルが高いのか?
まず、理由の1つ目は日本は魚介類に恵まれているということ。
日本は四方を海に囲まれた島国のため、多様な魚が生息しています。その上、南北に長いため、エリアごとに獲れる魚の特色が異なります。
たとえば、日本海側と太平洋側では違いますし、同じ日本海側でも富山湾のように水深が深いところと、そうでないところでは、それぞれ味に違いが出ます。このように、獲れる魚が多様であるということが、日本の料理の幅を広げてきた一因だと思います。
2つ目は、日本の職人は非常に探究熱心だということ。
魚を例に出して説明すると、日本と同じ美食大国として名高いフランスは、日本に比べて魚の多様性が低いです。これは私の肌感覚になりますが、フランス人は日本人の10分の1、あるいは20分の1ぐらいの種類の魚しか食べません。
そもそもとれる魚種の数に違いがあるだけでなく、調理技術も日本に比べると多くありませんから、物足りなさを感じてしまいます。ジビエに関しても日本ほど食べられている国はほとんどないといわれます。
そして3つ目は、日本の職人は仕事が非常に丁寧だということです。
先程の探究心にも通じる話ですが、彼らは探究心にもとづき、切磋琢磨して、技術を確実に磨いてきました。たとえば、捕獲した魚はそのまま放っておくと死んでしまい、身がどんどん劣化していきますが、神経締めや放血といわれる作業をすることで、美味しさを保つことができます。
また、捕獲してきた魚の興奮を鎮めるために、2日間ほど水槽の中で寝かせ、リラックスさせたうえで手当てをするというようなことも行います。こうした魚の扱いに関しては、日本以外の国でも少しずつ行われるようになってきてはいますが、日本に比べるとまだまだ粗雑だと感じます。
このように、日本は食材が豊富で質が高いうえ、それを活かそうとする人々の探究心・努力が相まって、美食大国となりました。
けれども、忘れてはいけないのは、東京や京都がミシュランで高く評価されているのは、地方の素晴らしい食材があってこそ。それらが列島の中心部に集められ、それぞれの個性を、創造性と技術力をもってシェフが編纂し、一流の料理に昇華させているのです。
東京をはじめとする大都市が輝けるのは、地方の食材のおかげだといえるでしょう。
※本記事は、『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著・ダイヤモンド社刊)より、抜粋・編集したものです。






