そのため私はどの患者に対しても、アポE遺伝子型を調べてもらうことにしている。
一方、アポEのe2バリアントは、その保有者を認知症から守ってくれるようだ。しかも、長寿と大いに関連していることが判明している。
アポEのバリアントを見れば
長生きする可能性が割り出せる
2019年には、長寿に関する7つの調査結果がメタ分析〔複数の研究結果を集め、その内的関連などを分析すること〕された。
この大がかりな分析によれば、全部で3万人ちかくの参加者のうち、アポEのe2バリアントを少なくともひとつ保有している(そしてe4バリアントを保有しない)人は、e3バリアントコピーをふたつ持つ最も一般的なタイプに比べ、超高齢まで(男性は97歳、女性は100歳と定義される)生きる可能性が30パーセント高くなるようだ。
一方、両親からそれぞれe4バリアントを受け継ぎ、結果としてコピーをふたつ持つ人は、分析によれば長生きする可能性が81パーセント少ない。これはかなり大きな違いだ。
これが私たちの戦略にさまざまなレベルで関わる可能性は高い。まず何よりアポEのバリアントは、アルツハイマー病の発症を遅らせる(あるいは遅らせない)ために確実に一定の役割を果たしているようだ。
これは単なる偶然とは思えない。なぜなら、コレステロールが体内、特に脳のなかを循環し続けるうえで、アポEは重要な役割を果たすからだ。
さらにアポEのバリアントは、グルコース代謝にも大きな影響をおよぼす。このバリアントは長寿と関わっているが、認知機能の健康に集中的に取り組み、コレステロールやリポたんぱく質(コレステロールを体全体に運ぶ粒子)、さらにはグルコース代謝の問題を深く追究するうえでも役に立つはずだ。
他にも研究者は、コレステロールに関連するふたつの遺伝子を特定している。
それはCETPとAPOC3で、どちらも長寿に関わっている(そして、センテナリアン〔編集部注/100歳を超える長寿者〕が滅多に心臓病で死なない理由を説明できると考えられる)。







