
アバンタイトルは長すぎる
「あのお嬢様がペリー(ヘブン)と結ばれて松江に残るようになれば20円は安泰」
お嬢様とはリヨ(北香那)。
「さらにおトキがそのままお嬢様とペリー夫妻の女中になれば、女中の格がえらいことになって、30、いや40、50、60、いや70円! 70円はもらえるかもしれませんよ」
70円と聞いて「一家を挙げて応援じゃ」
にわかに盛り上がる勘右衛門と司之介。70円はさすがに多くないか。もしそれが可能であれば女中っていい仕事である。
「県知事閣下のお嬢様 ガンバレ」「結ばれー 結ばれー」と大声で応援したり祈ったり。
「人間としても格は下がるばかりだわね」とフミ(池脇千鶴)はあきれ顔。
トキもしぶしぶ流されるまま「頑張れー頑張れー」と参加する。
司之介が勇んで出ていき、勘右衛門と銭太郎が口げんかを続け、トキは食事をする。流れるような愉快なシーンのあと主題歌がはじまる。
主題歌の流れるタイトルバック(ドラマの題名や出演者やスタッフのクレジットなどが掲載されている部分)までを「アバン(タイトル)」と呼ぶが、第52回のアバンは5分くらいあった。アバンはドラマの序章として、これまでのあらすじやごく短いシーンで成り立つことが多い。
だが5分といったら15分の3分の1だ。『サザエさん』で言ったら1回3話分の1話分だ。つまり52回のアバンというより本編である。
実は第51回のほうがもっとアバンが長かった。6分あった。もはやアバンという概念ではない。
プロローグというよりは、しっかりした短い本編を成立させているのは、俳優たちの見事なお芝居。
高石あかりの共演者の印象はこうだ。
「松野家の皆さんは本当にすてきで優しくて、池脇(千鶴)さんとはだんだん顔が似てきている気がします(笑)。おじじ様と父上の情けないけれどもトキをしっかり愛しているところも憎めません。台本が面白い上に小日向さんと岡部さんが演じられるとより憎めないキャラクターになっていて、相当憎いことをされているのに憎めないんです(笑)。
トキと錦織さん(吉沢亮)が初めて出会うシーンも忘れられないぐらいずっと笑っていました。アドリブ合戦になった時、私が仕掛けたお芝居を吉沢さんが全部受け止めてくださる安心感がすごかったです。受け止めるだけではなくやり返されて、笑ってしまうこともありましたけど(笑)。
ただ、笑わせようと思っているわけではなくて、この台本は何かを仕掛けようとすると失敗する台本だと思います。だから、全員武器を削ぎ落とされてそれでも戦いに行く感覚。『何もしないふざけ』を手に入れようと頑張っています。『ばけばけ』を通して役者としても『ばけ』られるように頑張ります!」







