「読むほどに賢くなれる、全世代におすすめしたい一冊」
と話題になっているのが、書籍『もっと頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』(野村裕之著、ダイヤモンド社刊)だ。Google、Apple、Microsoftといった超一流企業の採用試験でも出題され、“考える力”を問うテストして注目される「論理的思考問題」の傑作を紹介している。前作『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』は2024年の年間ベストセラー4位(ビジネス書単行本/トーハン調べ)になった。
そんな書籍の最新作が、いま、大人だけでなく子どもにまでウケている。「親が買ったら、先に子どもが読んでいた」「ゲームばかりしている兄弟が取り合っていた」と反響を得ている同書から、「着眼点を変えて考えられる人」だけが解ける問題を紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

「ビジネス書なのに子どもが夢中になっている!」と話題の本で紹介されている思考トレーニング『3色のカメレオン』とは?『もっと!! 頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』より

「着眼点」を変えて発想できるか?

 考え方をズラして、新しい方法を考える。
 その感覚をさらにつかむために、1問、挑戦してみましょう。
 複雑に見える状況、どこが着眼点になるのでしょうか?

「3色のカメレオン」

 3色のカメレオンがいる。

 それぞれ、青が13匹、赤が15匹、緑が17匹。

 色が異なる2匹が触れ合うと、どちらの色でもない色に変化する。

 たとえば青と赤のカメレオンが触れ合うと、2匹とも緑に変化する。

 このカメレオンたちを1箇所に閉じ込めたとき、すべてのカメレオンが同じ色になることはありえる?

「ビジネス書なのに子どもが夢中になっている!」と話題の本で紹介されている思考トレーニング『3色のカメレオン』とは?

イラスト:ハザマチヒロ
――『もっと!!頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』(159ページ)より

 とっても簡単そうに見えますが、考えてみると難しい問題です。すぐ解けると思ったのに、何かがおかしい。問題文はシンプルながら、極めて独創的な問題です。

現時点でわかること

 まずは、初期状態のカメレオンの数と、すべてのカメレオンが同一色になった場合の匹数を確認してみましょう。

初期状態:青13匹 赤15匹 緑17匹
すべてが青になる:青45匹 赤0匹 緑0匹
すべてが赤になる:青0匹 赤45匹 緑0匹
すべてが緑になる:青0匹 赤0匹 緑45匹

 ……まあ、当然こんな感じになりますよね。とくに情報は増えていません。「だから何?」と思ってしまうところですが、

・すべてのカメレオンが同一色になったとき、それ以外の2色は同数(=0匹)である
・初期状態において青と赤は2匹差、赤と緑は2匹差、青と緑は4匹差

 という何気ない事実が、この問題においてはかなり重要になってきます。

適当にくっつけてみると……

 いっけんつかみどころのないこの問題、なんとなく試していくと、少しヒントが見えてきます。たとえば、赤と青のすべてのカメレオンを触れ合わせてみます。すると、青と赤の13匹のカメレオンが緑になって、緑は合計43匹に。そして赤が2匹残ります。

 青13 赤15 緑17→ 青0 赤2 緑43

 残った赤2匹はどうしましょう? 緑と触れ合わせるしかありません。ひとまず、赤1匹を緑1匹と触れ合わせると、青2匹、赤1匹、緑42匹になります。

 青0 赤2 緑43→ 青2 赤1 緑42

 うーん、色がばらけてしまいました。それなら再度、赤と青を触れ合わせてはどうか。

 それでも結局、青1匹、赤0匹、緑44匹になり、すべて同一色にはなりません。

 青2 赤1 緑42→ 青1 赤0 緑44

 ……すべてのパターンでこれを試そうとするとかなり大変です。どうやら、「とにかく試してみる」とは別のアプローチが必要になりそうですね。

注目すべきは何か?

 そこで、視点を変えてみましょう。着目したいのが、

差」です。

 2匹のカメレオンが触れ合ったときのことを考えてみましょう。赤と青が触れ合うと、2匹とも緑になる。すなわち、それぞれの色のカメレオンの数が、

 青:-1
 赤:-1
 緑:+2

 のように変化します。重要なのは、色が増減した数ではありません。増減の「差」です。

 いま、それぞれの色の差は次のように変化しました。

 青と赤の差:(どちらも1ずつ減ったので)0
 青と緑の差:(青が1減って緑が2増えたので)+3
 赤と緑の差:(赤が1減って緑が2増えたので)+3

 この「差」に着目して、起こりうるパターンをまとめてみましょう。異なる色のカメレオンが触れ合うと、それぞれの「色の差」は以下のように変化します。

・青と赤が触れ合うと
→(青と赤の差:0)(青と緑の差:+3)(赤と緑の差:+3)
・青と緑が触れ合うと
→(青と赤の差:+3)(青と緑の差:0)(赤と緑の差:+3)
・赤と緑が触れ合うと
→(青と赤の差:+3)(青と緑の差:+3)(赤と緑の差:0)

 ここから読み取れる事実。それは、

 2匹のカメレオンが触れ合うと、各色の数の差は0あるいは3で変化する

 ということです。

触れ合った後の、各色の「差」を考える

 さて、最初に確認した「すべてのカメレオンが同じ色になる」場合を思い出してみてください。すべてのカメレオンが同一色になったとき、それ以外の2色は同数(つまり0)であることを確認しました。

 同数とはつまり、差が0の状態です。「青と赤」「赤と緑」「青と緑」、いずれかの色数の差が0になるということです。もしすべてのカメレオンが緑になったら、「青0,赤0,緑45」となり、「青と赤」の差は0ですよね。

 ここで、初期状態を思い出してください。青、赤、緑のカメレオンは、それぞれ13,15,17匹。ということは、

 青と赤の差は2
 赤と緑の差は2
 青と緑の差は4

 そして先ほど、カメレオンが触れ合ったとき「各色の差」は「0」もしくは「3」で変化するとわかりました。

 ……ん?
 そうです。差が「2あるいは4」の状態でスタートしましたが、各色の差は「0あるいは3」でしか増減しないため、

 各色の差が0になることは永遠にありえません。

 2や4に、いくら0や3を足したり引いたりしても、0にはなりませんからね。つまり、すべてのカメレオンが同じ色になることはありえません。

<正解>
 すべてのカメレオンが同じ色になることはない

この問題から学べること

 この問題の初出は1984年に開催された国際的な数学コンテストでしたが、「計算力」よりも「発想力」が重視される問題として出題されました。

 本書のなかでは珍しく「可能性を検証する問題」です。こういった可能性を論理的に考える思考は、実生活でもかなり大切だと感じます。少しやってみてダメだったから、絶対に無理だと決めつけてしまう。逆に、たまたまうまくいったから、今後もうまくいくと考える。1つのケースにとらわれて、その背景にある論理を見落としてしまうということは少なくありません。

「なぜダメだったのか」「なぜうまくいったのか」、その理由を論理的に導き出せると、撤退や改善といった具体的かつ確実な手段が見えてきます。運や努力に頼るのではなく、論理で証明する。その大切さを教えてくれる素晴らしい問題だと思います。

(本稿は、『もっと!! 頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から抜粋した内容です。書籍では同様の「読むほどに賢くなる問題」を多数紹介しています)