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AIが仕事を奪う時代、頭脳労働と肉体労働ではどちらが「生涯年収」で勝るのか?実は米国では、会計士から配管工に転身し、年収2000万円超を稼ぐ人々が急増しており、稼げる職種の常識が覆されている。しかし、専門家は「現場仕事すら2030年までに消える」と冷徹に予測。すべての労働価値が消滅する未来を見据えた「たった1つの生存戦略」とは――。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)
会計士捨て配管工へ
年収3倍の「新階級」
今、アメリカには「ブルーカラービリオネア」という言葉が生まれています。AIがホワイトカラーの仕事を奪う一方で、人手不足のブルーカラーの仕事には安定して需要が見込めるものがあり、そのような仕事に転職したほうが生涯年収が高くなるという話です。
ビリオネアというのはあくまで比喩ですが、安定した建設需要がある電気設備技師や空調設備技師、配管工といった仕事の場合、アメリカでは年収2000万円が普通に視野に入るというのです。実際にこういった仕事に転職するための職業訓練校は入学者が二けたのペースで増加しています。給与があがる見込みのないホワイトカラーと比べれば転職後の年収に3倍の格差が生まれているということです(日本経済新聞『米国、会計士から配管工で給与3倍の幸福度 「AIで雇用創出は望み薄」』12月3日)。
私が『仕事消滅』という本を書いたのが2017年でした。その当時の私の予測も同じで、2025年から2035年の間に消滅する「人口の半分の仕事」は主にホワイトカラーなど頭脳労働の仕事になるというのがその当時の主張でした。
一方で生き残る仕事の筆頭は私が「メカトロニクス人材」と呼んだ、高度な知識や経験が必要なうえに、現業で手足を動かしながら仕事をする職業だと予測しました。これが今、話題のブルーカラービリオネアと呼ばれる仕事と一致しています。
ただ日本市場では、いわゆる現業と呼ばれる現場の仕事にホワイトカラーが転職する流れはまだ生まれていません。ブルーカラーの仕事もエッセンシャルワーカーの領域では賃上げもままならない環境にある仕事も多い状況です。
さらに言えば、市場のAI投資資金はロボットに搭載されるフィジカルAIに向かい始めています。人型ロボットが現業を代替すればブルーカラービリオネアも仕事を奪われかねません。
どちらも消滅する予測が成り立つ中で、ホワイトカラーとブルーカラーではどちらに将来性があるのでしょうか。『仕事消滅』を執筆してから8年がたった今、最新の「仕事消滅事情」について3つの視点でまとめてみたいと思います。







