【視点1】
アメリカのAIリストラ事情

 日本よりも早く、アメリカの大企業ではAIリストラが始まっています。アマゾンドットコムのアンディ・ジャシーCEOは「生成AIの導入で効率性が上がり、今後数年間で従業員が減っていく」と公表し、AIに伴う人員削減の開始を宣言しました。

 10月末に発表された計画では、アマゾンの管理部門を中心に世界で1万4000人のリストラを行うとされています。AIの性能が上がったことで、一日中デスクの前に座ってコンピュータにカチャカチャとタイピングするようなホワイトカラーの仕事がまず最初になくなりそうです。

 一方で同じアマゾンは現業の配送員を対象にした「アマゾンデリバリーグラス」の導入も発表しています。スマートグラスをアマゾンの業務に合わせて開発したもので、このメガネをかけると配達員が次の配送場所に持っていく荷物がどれなのかスマートグラスがバーコードを読み込んで判別してくれ、さらに配達経路の地図まで表示してくれます。そして置き配の証拠写真もボタンひとつで撮影し格納してくれます。

 アマゾンの職場の進化を見ていくと、これまで一貫してブルーカラーの仕事がDXによって効率化されてきました。巨大なアマゾンの倉庫では商品を格納した棚が庫内を行きかい、ピックアップすべき商品がピックアップ要員の目の前に到着します。

 これまではラストワンマイルと呼ばれる、顧客に配達する最前線の仕事だけがまだ労働集約的だったところを、デリバリーグラスの導入で大幅に生産性を向上させることになりそうです。ホワイトカラーの仕事がなくなる一方で、ブルーカラーの仕事はAIの活用でだんだん楽になっていくというのは、従来の予測シナリオ通りだと感じるかもしれません。

 しかし、これまでの予測と違う変化もふたつ起きています。

 ひとつはブルーカラーの仕事の中で、ブルーカラービリオネアを狙える仕事と狙えない仕事が分かれ始めていることです。