その先、2026年以降に起きるのが「推論」の時代への移行です。まだ現状、生成AIは調べたものをまとめることのほうが得意ですが、計算能力が増強されることで今後は推論もこなすように進化します。

 現在、高い給与をとれるホワイトカラー人材のスキルは、高い専門知識と高度な推論能力にあります。このふたつが2026年以降、AIにとって代わられる未来がもう目の前に出現しそうです。

【視点3】
フィジカルAIの発展予測

 生成AIの発展とはうらはらに、人型ロボットの進化はこれまでずっと遅いままでした。

 ところがいま、中国のハイテク産業ではこの人型ロボットの開発に圧倒的な規模の投資が集まっています。人型ロボットは西側でも注目されています。EV大手のテスラは人型ロボットのオプティマスの開発を進めています。ベンチャーの1Xテクノロジーズは、来年にも家庭内の家事を手伝う人型ロボットの「NEO」を一体約300万円で発売すると発表しています。

 人型ロボットの進化が遅かった理由はビッグデータの不足にありました。人間の指は、人間の体の中では眼についで多くの情報処理能力を必要とする器官です。眼についてはAIに画像データを学習させることでAIを育てることが容易だったのですが、指はそれに代わるビッグデータが存在しません。

 とはいえAI自体が進化する中で、シミュレーターで指を学習させるビッグデータを自動生成させるところまではできるようになりました。これが昨年までのフィジカルAIの到達点でした。

 2025年にこの状況が一段階先に進みます。ソフトバンクグループがヨーロッパの重電大手ABBのロボット部門を買収したのです。その意味するところはシンプルです。ソフトバンクグループが投資しているフィジカルAIベンチャーの開発する人工知能が一定レベルに育ったので、次はそれを搭載する腕が必要になったのです。

 人型ロボットは人間と同じように二足歩行する動きが注目されがちですが、産業の現場ではアームの先に装着されたハンドの動きが人間に近づくことが最も重要です。このハードルを超えることができれば、工場のラインで稼働する高価な専用ロボットは、より安価な汎用ロボットアームに段取り替えなしで置き換えることができるようになります。