シンガポール国立大学(NUS)リー・クアンユー公共政策大学院の「アジア地政学プログラム」は、日本や東南アジアで活躍するビジネスリーダーや官僚などが多数参加する超人気講座。同講座を主宰する田村耕太郎氏の最新刊、君はなぜ学ばないのか?』(ダイヤモンド社)は、その人気講座のエッセンスと精神を凝縮した一冊。私たちは今、世界が大きく変わろうとする歴史的な大転換点に直面しています。激変の時代を生き抜くために不可欠な「学び」とは何か? 本連載では、この激変の時代を楽しく幸せにたくましく生き抜くためのマインドセットと、具体的な学びの内容について、同書から抜粋・編集してお届けします。

【投資で成功するカギ】本質を見抜く5つの条件とは?Photo: Adobe Stock

安く買う2つの秘訣

 繰り返しになるが、投資で成功するためには、安く買うことが大事である。

 安く買う秘訣は、

 ・大きく育つ可能性のある投資案件に早く出会う
 ・その投資案件の本質的価値に早く気づく

 ことである。

 投資のリターンが2万倍になったジェフ・ベゾス氏のご両親は、決してアマゾンの起業アイデアの本質を見抜いて投資したわけではない。ただただ、我が子を支援したいという気持ちだったようだ。

 だが、とにかく「誰よりも先にジェフ・ベゾスに投資できた」ことは確かだった。他に誰も、出資者がいなかったのだから。

優秀な若い人に出会う機会を増やす

 私も、投資家としてガッツがあって優秀な若い人たちに出会う機会を、できるだけ増やそうと努力している。

 例えば、私が主宰するシンガポール国立大学・クアンユー公共政策大学院の「地政学プログラム」を受講する人に、奨学金を出しているのだ。

 学費は私が負担するが、シンガポールへの交通費やシンガポールでの滞在費は、その人持ちだ。

 それらを何とか手当してくる人材は、とても優秀である。そして一様に起業家精神が旺盛だ。

 こういう人たちに出会えて何があるかわからない。しかし、彼ら・彼女らを応援して、出会うきっかけを持っておくことは重要だ。

本質を見抜く5つの条件

 安く買う秘訣、いい投資をするには、「大きく育つ可能性のある投資案件に早く出会う」「その投資案件の本質的価値に早く気づく」ことであると述べた。

 純粋な投資案件として本質を見抜くとは、

 1.プロダクトやサービスが確実にできる
 2.それらがハイマージンである
 3.それが目指す市場規模が大きい
 4.差別化がしっかり効いている(だからハイマージン)
 5.それをやり切れる起業家とチームである

 こういう条件を満たすかどうかである。

 こういうものを見抜いていく訓練を続けていくと、安くていいものしか興味がなくなる

 安くていいものしか買わない訓練を厳しく律するように継続しているからだ。

 となると、高いだけで価値がそこまでないものには興味がなくなる。

 そんなものを買っていたら、投資家として即落第である。

 食べ物から着るもの、住居から嗜好品まで、「値段の割に価値があるか(バリュー・フォー・マネー)」を常に考えるようになった。

 投資の訓練を経て、実力が少しずつついてくると、どんどん生活が地味になる自分に気がつく。本当に無駄なものに興味がなくなるのだ。

 私の友人に、実質世界で最もお金持ちの一人にあたる人がいるが、彼の質素な生活ぶりには、昔から違和感しかなかった。

 しかし、今ではとても共感を持てるようになった。

(本稿は君はなぜ学ばないのか?の一部を抜粋・編集したものです)

田村耕太郎(たむら・こうたろう)
シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院 兼任教授、カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル・リーダーシップ・インスティテュート フェロー、一橋ビジネススクール 客員教授(2022~2026年)。元参議院議員。早稲田大学卒業後、慶應義塾大学大学院(MBA)、デューク大学法律大学院、イェール大学大学院修了。オックスフォード大学AMPおよび東京大学EMP修了。山一證券にてM&A仲介業務に従事。米国留学を経て大阪日日新聞社社長。2002年に初当選し、2010年まで参議院議員。第一次安倍内閣で内閣府大臣政務官(経済・財政、金融、再チャレンジ、地方分権)を務めた。
2010年イェール大学フェロー、2011年ハーバード大学リサーチアソシエイト、世界で最も多くのノーベル賞受賞者(29名)を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で当時唯一の日本人研究員となる。2012年、日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。ミルケン・インスティテュート 前アジアフェロー。
2014年より、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授としてビジネスパーソン向け「アジア地政学プログラム」を運営し、25期にわたり600名を超えるビジネスリーダーたちが修了。2022年よりカリフォルニア大学サンディエゴ校においても「アメリカ地政学プログラム」を主宰。
CNBCコメンテーター、世界最大のインド系インターナショナルスクールGIISのアドバイザリー・ボードメンバー。米国、シンガポール、イスラエル、アフリカのベンチャーキャピタルのリミテッド・パートナーを務める。OpenAI、Scale AI、SpaceX、Neuralink等、70社以上の世界のテクノロジースタートアップに投資する個人投資家でもある。シリーズ累計91万部突破のベストセラー『頭に来てもアホとは戦うな!』など著書多数。