年末や年始の挨拶、形式だけで終わっていませんか? いつもの会話から一歩進んで「一年」を振り返り、「次の一年」を一緒に描けば、取引先の“伴走者”として関係性を強化できるチャンスです。そのために、どのような話をすればよいのでしょうか?
コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』の著者・田中耕比古氏に、具体的な解決策を教えてもらいました。(構成/ダイヤモンド社・林拓馬)

頭のいい人が「年末・年始の挨拶」で絶対に話題にすることベスト1Photo: Adobe Stock

将来の関係性を強化する

年末の挨拶は、取引先と普段とは別のモードで話せる貴重な機会です。

日々の会話はどうしても発注や納期など短期の話題に寄りがちですが、年末は「この一年」を振り返る長いスパンで対話できます。

これは同時に、「次の一年」、さらには三年、五年といった将来の方向性まで視野を広げられるチャンスでもあります。

せっかくのチャンスですから、形式的な通り一遍の挨拶で終わらせず、関係の質を一段引き上げる場として設計することが大切です。

年末の挨拶で訪問した際には、
一年の良かった点を確認し、
悪かった点率直に反省し、
③それを踏まえて、次の一年はどのような取り組みをご一緒できそうか
を、腰を据えて話します

必要があれば3~5年先の構想にも触れ、「本日の内容を踏まえ、年始に改めてご相談させてください」と一言添えて締めます。

そうすることで、相手の思考を“将来に向けてセットアップする”ことができます。

お休みが明けた年始の挨拶まわりでは、年末の地ならしを受けて、話を前に進めるフェーズに駒を進めます。

冒頭で「昨年末にお話しした今年の展望について、少し考えてまいりました」と切り出し、“いま取り組める目の前の業務”にフォーカスしてお話します。ここでポイントとなるのは、年末は「将来の夢」あるいは「抽象的な話」、年始は「現実」「具体」を意識することです。

たとえば、
着手領域(どこから始めるか)
体制と役割(誰が関わるか)
期日と評価軸(いつまでに何を測るか)
簡潔に提示します

もちろん、あくまでも「挨拶」の場ですから、そんなに長くは議論もできません。そのため、大きな方向性を伝えた上で、詳細な話をする打ち合わせの日程を決めたり、取り組みたい内容の検証タスクについて合意したりできると理想的です。これによって、新しい1年のスタートをスムーズに切ることができます

この「年末=長期の方向合わせ/年始=短期の実行着手」という二段構えにより、単発の取引相手ではなく、長いスパンで伴走するパートナーとしての立ち位置を目指せます。

年末で未来の地図を一緒に描き、年始で地図に最初の一歩を刻む――この切り分けが、相手の期待を裏切らず、また、社内外の合意形成も進めやすくします。

年末年始の挨拶は儀礼的なイベントではありますが、コミュニケーションの設計次第で“新たな一年のスタートダッシュ”に変えられるのです。

(本記事は『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』の著者・田中耕比古氏への取材をもとに作成しました)