最近では、グローバルな場面でのコミュニケーションスキルのトレーニングなど、さまざまなスキルのトレーニングに対してシリアス・ゲームが開発されて成果を残しています(注6)。

 もちろん教育の現場でも、数学、科学、歴史、言語学習、ITスキルなど、さまざまな科目の学習にシリアス・ゲームが開発されてきました(注7)。

メンタルヘルスの分野でも
幅広く応用されている

 ゲームのエンタメ目的以外での使用は、さらに医療の現場にも広がりつつあります。

 イーロン・マスク氏のインタビューに出てきたように、外科医のトレーニングなどにシリアス・ゲームが使われたり、ゲームが治療法としてアメリカのFDA(編集部注/アメリカ食品医薬品局)に認可されているケースまであります。

 最初のシリアス・ゲームとしてのFDA認可は、2020年に、ADHDの治療法として開発された「EndeavorRx」(エンデバー・アールエックス)というゲームでした(注8)。

「ADHD」は注意欠如・多動性障害のことで、これまで薬による治療や心理療法などが開発されてきましたが、薬の副作用や、本人や家族の負担などの課題が指摘されていました。

 そこにきて、ゲームをすることで、ADHDの症状を緩和することができるようになったのは、非常に画期的なことでした。

 EndeavorRxは認可後もさまざまな検証の中で、効果が検証、確認されてきています(注9)。

 最近では、EndeavorRx以外にも、うつ病治療などのメンタルヘルスの分野で、いくつものシリアス・ゲームが開発されてきています。Zengenceもその1つです。

宣伝を目的に作られた
「アドバーゲーム」

 さらに、シリアス・ゲームはビジネスのあり方も変えつつあります。

 たとえば、消費者がゲームをプレーすることで、商品のブランドイメージを高めたり、販促効果が生まれることを狙う。

(注6)Laamarti F, Eid M, Saddik AEI (2014) “An Overview of Serious Games.” International Journal of Computer Games Technology,358152.
(注7)Lopez J, Huaycho R, Santos F, Mendoza F, Paucar F (2023) “The Impact of Serious Games on Learning in Primary Education: A Systematic Literature Review.” International Journal of Learning,Teaching and Educational Research, 22(3):379-95.
(注8)https://www.endeavorrx.com/
(注9)Oh S, Choi J, Han DH, Kim E (2024) “Effects of Game-Based Digital Therapeutics on Attention Deficit Hyperactivity Disorder in Children and Adolescents as Assessed by Parents or Teachers:A Systematic Review and Meta-Analysis.” European Child & Adolescent Psychiatry, 33(2):481-93.