現在の会社で55歳の役職定年を迎えた後、どんな仕事ができるのか考えてみてください。もし第一線から外されるのであれば、なんとか働き続けられるよう会社に働きかける。それが無理でも空いた時間で副業を始めたり、自分で会社を作ったりすることもできます。思い切って転職をしてもよいかもしれません。

 いずれにせよ、自分がビジネスの最前線に立つこと。地位と経験に安住せず、ドキドキするような仕事に挑み続けてください。これを50歳になる頃から意識して動くことです。別の言い方をすれば、市場と繋がり続けることが重要です。

 とくに大企業の管理職が年齢を重ねていくと、社内に対する「言い訳」が仕事として多くなり、エネルギーが社内に向けられがちになります。しかし、これでは社外で通用しない人材になってしまいます。

 ましてや、現在はAIを始めとするテクノロジーの進化がすさまじく、変化の激しい時代です。自社内だけに目を向けていたら世界が狭くなり、アップデートが遅れてしまいます。自分の専門領域の会合や興味のある分野のセミナーに参加する等、その気になればすぐやれることはいくらでもあります。そこから生まれる偶然の出会いやネットワークもあるでしょう。

 こうした動きを自らしていくには、新しい物事や動向を知りたいという好奇心を常に高く保つことが大切です。自分の置かれた環境や状態も含めて面白がれるマインドセットがあると、無理なく楽しく好奇心を発揮できると思います。これが「稼ぐために仕方なく」という気持ちでいると、辛くなってしまうでしょう。

 そして、最終的に「周りから必要とされるから引退できない」という状態をつくることが理想です。職場で必要とされる人になることができれば、職業人生の終盤戦はより満足度の高いものになると思います。

 20年ほど前、ある大手企業の取締役を退任した後もビジネスの現場で活躍し、私もお世話になっていた方が会食の席で次のように話していました。

「周りはみんな隠居してゴルフ三昧だけど、僕は今も丸山君のような若い人たちと仕事ができて、楽しくて仕方がない」

 自分も当時のこの方の年齢に近づいてきて、よく気持ちがわかるようになりました。

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