ここで日本の首長が、積極的におこめ券に手を挙げる自治体と、おこめ券を選ばない自治体に分かれる理由がはっきりします。

 日本の中でも「コメの生産地」である自治体の首長は、この機会に重点支援地方交付金をおこめ券に使うべきです。それなら物価高に苦しむ市民と、コメ流通の目詰まりに苦しむコメ流通の双方を助けることができるのです。

 一方でおこめ券を選ぶインセンティブのない自治体とは、地元でそれほどコメを生産していない自治体です。つまり大都市圏の自治体だったり、郊外では農業が盛んだけれども、おもにお茶を栽培しているような自治体は他の方法で市民の物価高対策に還元したいと考えるのです。

 今回の交野市長の発言がSNS上でバズったことで、都市圏の自治体の中でおこめ券を見送る自治体が出やすくなった効果はあったと思います。私のように東京のど真ん中で生活している立場では、個人的にもおこめ券よりもキャッシュレスのポイントで還元してもらったほうがよほど生活は助かります。今回の騒動はその意味で歓迎します。

 とはいえさまざまな思惑が混じった結果、おそらく特別枠の4000億円の半数以上はおこめ券に向かうことになるのではないでしょうか。そしてその結果は、ここで述べたように日本の農業も、物価高に苦しむ国民もバランスよく救済する未来になるのではないでしょうか。ならばめでたしです。