ラストの下りも強ければ
山の神になれる可能性が高まる

 ただ、ここで勝負が終わるわけではない。上りはもうひとつだとしても、下りで力を発揮する選手もいる。今井は、ラストの下りが順位を決める勝負になるという。

「下りでしっかりと切り替えた人は、30秒から1分は稼げると思うんです。僕は上りを85パーセントから90パーセントの力を使って上っていました。体はきついのですが、ラストに余力を残しているという気持ちでいたので、思い切って下っていけました」

 今井は上りのスピードが驚異的といわれたが、実は上りプラス下りのトータルで記録を出していたのだ。

 上りも下りも強ければ、神になれる可能性は一段と高まるが、柏原と神野は、それほど速くはない。むしろ苦手だった。だからこそ上りに集中した。神野はこう語る。

「僕は、下りは得意じゃなかったです。後傾して走ってしまうんですが、なぜか解説者にはタイムが良いので下りも速いって褒められましたけど、実際は全然です。どちらかというと苦手で、僕は最後の5キロを14分32秒で、柏原さんも14分35秒で変わらない。でも、区間新を出せた。下りでがんばるという人もいるけど、それはムダかなと。下りは耐えられるし、がんばれる。別モノなんです。だから、小涌園から上りきるところまできついけど、全力で行ったほうがいいです」

 5区は、探りや駆け引きなど平地区間に見られる戦術的なものは必要ないのかもしれない。ただ、自分を信じて上る。

 自分との究極の根競べの場だ。

4代目山の神になれるのは
初めて5区を走るニューカマー

 これから「山の神」は生まれてくるのだろうか。

 3人の「山の神」がフォームもタイプも異なるように、どんな選手が「山の神」になれるのかを限定するのは現実的ではない。たぶん、能力的に必要な要素がそろっていれば、誰にでもチャンスはある。だが、平等ではない。

 5区で区間新をマークし、チームを優勝に導く――。すべてのピースがそろわないと、その称号を得られないことを考えると、20チーム中、数校の選手に限られる。