神奈川大学の大後栄治前監督(編集部注/箱根駅伝で総合優勝2回〔往路優勝3回、復路優勝1回〕の実績を残す。2024年の第100回大会を区切りに監督を勇退。箱根駅伝の生き字引といわれる)は、小涌園までは、『山の神』レベルの強いランナーがいなければ、それほど差が開かない。勝負を決めるのは、その先にあるという。

「小涌園のところまでは、体調さえ悪くなければそれなりにもっていけます。でも、そこからさらに上りきったところにある芦之湯の昔のガソリンスタンド(実際は会社事務所)までの間で差がつくようです。

 小涌園からはやっぱり疲れが出てくるところですし、そうなると体が浮いてきて、ペースダウンしてしまう。そこでペースを落とさずに維持していけるかが、5区を制すには大事なポイントになってきます」

 神野は、小涌園から最高到達地点の4.5キロメートルがもっとも重要だという。

「宮ノ下、小涌園までは、どんなペースで押してもいける。そこまでは、我慢すればなんとかもつんです。でも、小涌園から最高到達地点までの4.5キロがきつい。戦略的に上りではなく、下りに入ってからが勝負と考える選手もいますけど、僕はそれでは5区は勝てないと思います。

 青山学院大学でも過去、山を走ってうまくいかない選手がいましたが、話を聞くと、勝負の4.5キロでタイムを落としても下りで勝負すればいいという考えでした。

 今井さん、柏原さん、僕ら3人とほかの選手でいちばん差が開いていたのは、小涌園前からの4.5キロメートルでした。下りで勝つ確率よりも、この4.5キロメートルを我慢して落とさないで走れば、自然と差は開いていくし、前との差は詰まっていきます」

 神野は、区間新を出したとき、大平台から宮ノ下付近は10~20秒しかほかの選手と変わらないが、4.5キロメートルの区間で1分以上の差を開くことができたという。

 まさに、タイムが良い選手の共通点が、この区間でのラップだった。

 2021年の第97回大会、東洋大学の宮下隼人が並走していた駒澤大学の鈴木芽吹を突き離したのも、この区間だった。2020年の第96回大会で区間新記録を出した経験者は、勝負所を心得ていたようだ。