仕事ができない人に限って「頑張っているのに成果が出ない」と嘆くのはなぜか。数学者・秋山 仁は、そうした人ほど目的や段取りを詰めないまま馬力だけで走り、低い目標の達成に満足してしまうと指摘する。本田宗一郎、王貞治、スティーブ・ジョブズらの言葉を手がかりに、“伸びる努力”の条件を解き明かす。※本稿は、数学者の秋山仁『数学者に「終活」という解はない』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

コスパやタイパよりも
直感的に面白そうかどうか

 最高のものを求める強い気持ちがないと、結果は出ないものなんだよ 王貞治(プロ野球選手、監督)

本田宗一郎本田宗一郎 Photo:Francois LOCHON/gettyimages 

“So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something your gut, destiny, life, karma, whatever. This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.” スティーブ・ジョブズ

(今やっていることが、何らかの形で将来につながっていくのだと信じて、一生懸命取り組まなければいけない。すなわち、直感、運命、人生、カルマ、なんであれ、必ず、今やっていることが何かにつながっていくのだと信じなければいけない。私はこのような生き方をしてきて、一度も後悔をしたことがないし、このような生き方が自分の人生を大きく変えてくれたと思っている)

 近年、コスパだとかタイパだと言って、とかく人々の行動には、効率重視一辺倒の傾向が目立つ。すなわち、「それをやったらどういうメリットがあるのか」という視点に立ってものごとを判断し、メリットが目の前に見えていなければやらない人が増えているようだ。

 だが、目に見えるメリットや目標なんていうものは、結局計算できる範疇の手近なところにしか自分を導いてくれやしない。

 そういう目標でだけ計算高く行動するのではなく、「何になるかわからないけれど、直感的に面白そうだ」とか「やり遂げるのは大変そうだけど、チャレンジする価値がありそうだ」と思えるものに一生懸命取り組んでみると、思いがけないところに自分を導いてくれることがある。しかも、同じことをやるにしても、一生懸命やるかやらないかで結果は大きく違ってくる。