SNSには、きらびやかな生活があふれている。豪華な旅行、高級車、おしゃれな日常――。だが、私たちが「豊かさ」だと信じて追いかけているそれらは、じつは人生のほんの“1%”にすぎない。本当に人生を良くしているものの多くは、写真にも残らず、誰の目にも触れない“起きなかった出来事”だ。世界的ベストセラー『アート・オブ・スペンディングマネー 1度きりの人生で「お金」をどう使うべきか?』は、その見えない99%こそが、人生の質を決めていると教えてくれる。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
Photo: Adobe Stock
良い人生の大部分は「起きなかったこと」にある
私たちはつい、家や車、服、旅行といった“目に見えるもの”で誰かの豊かさを判断してしまう。SNSを開けば、華やかで充実した生活が次々に流れてくる。それを見るたび、「自分はまだまだだ」と焦りや不安を抱く人も少なくない。
しかし、世界的ベストセラー『アート・オブ・スペンディングマネー』は、そんな私たちの価値観を静かに揺さぶる。同書の中には、次のような一節がある。
(『アート・オブ・スペンディングマネー』より)
この一文は、“人生の豊かさとは何か”という問いに、深い示唆を与えてくれる。
豊かさとは、派手な成功でも、豪華なモノでもなく、「起きなかったこと」や「避けることのできたこと」の積み重ねでもある。うまくいった日以上に、「揉め事を回避できた日」「無理せず休めた日」「余計な後悔を生まずに済んだ日」が、人生の質を静かに押し上げている。
幸せになれない人は、1%の「目に見える幸せ」ばかり追い求める
だが、これらは他人からは見えづらい部分でもある。『アート・オブ・スペンディングマネー』ではこうも述べられている。
(『アート・オブ・スペンディングマネー』より)
つまり、私たちはいつも“1%の情報”だけを見て、他人の人生を豊かだと判断している。そしてその1%は、ほとんどが「わかりやすく見えるモノ」に偏っている。
だからこそ、私たちは誤解してしまう。派手な旅行をしている人は幸せそうに見え、高価な車を持つ人は人生がうまくいっているように見える。だが、それはただ“見える部分が大きい”だけなのかもしれない。
私たち自身の豊かさも同じだ。日々の平穏、避けられたトラブル、健康、無理をしなかった選択、抱かずに済んだ後悔――こうした“静かな豊かさ”は、SNSにも写真にも残らない。しかし、本当に人生を支えてくれているのは、この「誰にも見えない99%」なのだ。
今の生活が「なんとなく物足りない」と感じてしまう人は、99%の目に見えていない豊かさが見えていないのかもしれない。
だからこそ、こう問い直してみる価値がある。
今日はどんな問題を避けられただろう?
どんな後悔を生まずに済んだだろう?
どんな穏やかな時間があっただろう?
それに気づけた瞬間、あなたの幸福度は自然と上がるのだ。
(本原稿は、『アート・オブ・スペンディングマネー 1度きりの人生で「お金」をどう使うべきか?』(モーガン・ハウセル著・児島修訳)に関連した書き下ろし記事です)





