F:クルマにガタガタ言う前に、自分を見ろよと(笑)。

山:……ともかくですね、「昔をそのまま焼き直すのではなく、昔から学びつつ“今の時代におけるプレリュード”をデザインする」。その方針は、開発チームの中で常に共有していました。

 “不易流行”と言いますか、古きを訪ねて新しきを知る、あるいは“覧古考新”という言葉のほうが近いかもしれません。歴代が大切にしてきたものを受け継ぐ。しかし、いまの時代にはいまの姿がある。そういう考え方です。

24年ぶりの新型プレリュードは「復活」ではなく「襲名」

F:では開発の現場では、「復活させるぞ!」というよりも「襲名」に近い感覚だった。

山:その言い方がしっくりきますね。24年ぶりの名前ですから、いい加減には扱えません。開発する僕らには、先輩たちが作り上げ、積み重ねてきた財産を、未来に向けてつなぐ責任がある。だから名前が決まったときには、シャキッと背筋が伸びるような感覚がありました。

F:責任重大ですね。ホンダのOB会は怖いし、力があるし(笑)。

山:でもそれは「昔のプレリュードになる」という意味ではなく、「現代のプレリュードとしてどうあるべきか」を問い続けるスタートラインに立った、という気持ちに近かったですね。

F:お話を伺って、ようやく“24年ぶりのプレリュード”という言葉の意味が腑に落ちました。「復活」ではなく、「襲名」。そして、“昔の名前を大切にしながら、今の時代に正しいスポーツクーペを造る”。

 しかし、これほど難しい仕事もありませんね。ものすごいプレッシャーだったでしょう。

山:もちろん難しいですが、やりがいのある仕事でした。名前が決まってからは、開発メンバー全員の意識が1段上がり、さらにひとつにまとまったと感じています。「プレリュードを名乗る以上、中途半端は許されない」。という思いが強かったですね。

 このお話は、次号に続きます。

(フェルディナント・ヤマグチ)