2050年のカーボンニュートラルを目指して、自動車産業界でのEV(電気自動車)シフトが進んでいる。しかし、欧州、中国、そして米国では政治的な背景からEV政策が修正局面に入った。そうした中で、ハイブリッド車(HV)の存在感が増している。ホンダとスバル、それぞれの次世代HVに試乗するとともに、両社の戦略に迫った。(ジャーナリスト 桃田健史)
トヨタの部品を活用するもシステム全体はスバル専用設計
ここへきて、自動車メーカー各社が次世代ハイブリッド車(HV)を続々と投入している。
一時は、EV(電気自動車)シフトが叫ばれていたが、なぜこのタイミングでハイブリッド車を強化するのか。
12月に入って、スバルとホンダは相次いで次世代ハイブリッドに関する報道陣向けの事業と技術に関する説明会を実施した。
その詳細をお伝えしながらHVの行方を考える。
まずは、スバルからだ。
12月5日に、「クロストレック」にe-BOXER(ストロングハイブリッド)を搭載した新型モデルを発表した。
同車のプロトタイプについては今夏、静岡県内のクローズドエリアで報道陣向け試乗会を開催しており、本連載でも試乗記を紹介している(詳細は本連載『スバルの新ハイブリッド車を試走!「燃費イマイチ?」を払拭したクロストレック・ストロングHVの実力とは』参照)。
クロストレックには、e-BOXER(マイルドハイブリッド)がすでにラインアップされており、試乗会ではマイルドとストロングを乗り比べて、それぞれの特性を実感した。
今回の技術説明会は、スバル群馬製作所北本工場で行われた。
元々、同所は建設機械や農業機械に使用する汎用エンジン、スノーモービル向けの車載エンジン、また発電機などを製造していたが、2022年にリニューアルを開始。
今年10月から、ストロングハイブリッドシステム用のトランスアクスル生産拠点として生まれ変わった。生産能力は年間18万6000台。
トランスアクスルとは、変速機能を持つトランスミッションと左右輪の回転差を吸収する役割のディファレンシャルギアを組み合わせたもの。
スバルのストロングハイブリッドでは、トランスアクスルの中に発電用モーター、駆動用モーター、フロントデフ、そして後輪に駆動力を伝達する電子制御カップリング(電磁式)をワンパッケージにしている。
このトランスアクスルについて、「トヨタとの協業」と報じられることが多い。
そこで、実際の製造工程を見ながらスバル関係者に詳しく聞いたところ「2つのモーターのベースはトヨタだが、スバル用に設計を変えている」という。さらに「トランスアクスル内部のギア構造などは全てスバル独自設計」と言い切る。
ユーザーの中には、トヨタ「プリウス」などで導入済みのシステムを、そのまま水平対向エンジンにポンと載せたというイメージを持つ人がいるかもしれないが、実態は大きく違う。
25年に国内発売される新型「フォレスター」にもストロングハイブリッドが採用される。