山上:そうなんです。当時は日本も元気がありましたし、自動車文化としても非常に豊かで、スポーツクーペが“憧れの象徴”だった時代です。その記憶を重ね合わせたときに、「このクルマにはプレリュードがふさわしい」と自然発生的に出て、それを受け止めてもらえた。だから社内でプレリュードの名を冠することで反対されたことは、一度もありませんでした。
F:でも、若い世代はプレリュードの黄金時代を知らないですよね。若い人の反応はどうでしたか。下手をすると「昔の名前で出ています」扱いをされかねない。京都にいるときゃ忍と呼ばれたの~♪と。
山:私もそこが気になったので、しっかりとリサーチを行いました。プレリュードという名前と、今回のデザインをセットで見せて「どう思いますか?」と。すると意外にも、8割ほどが肯定的な反応でした。
残りの2割は、「俺の知ってるプレリュードじゃない」という声です。もっと低くて、薄くて、もちろんリトラクタブルで……当時のイメージをそのまま求める方ですね。
いま、リトラクタブルヘッドライトのクルマを造るのは非常に難しい
F:その気持ちはよく分かります。僕もあの時代の“パカっと開くやつ”は好きでしたから。中古で買った初代のRX-7にも乗っていましたし。でも、今リトラのクルマを造ることは、ほぼ不可能ですよね。歩行者保護の観点からも、対車両の衝突安全の観点からも。ADASとの相性も悪そうだし。
2代目プレリュード。普段はボンネットに隠れていて、点灯時にポップアップするリトラクタブルライトを採用していた(広報写真)
山:その通りです。「リトラクタブルは絶対にダメ」と法的に規制されているわけではないのですが、現実的には相当ハードルが高い。皆さんが今や“昔の俺じゃない”のと同じように、「プレリュードも昔のままではいられない」というのが正直なところです。
F:時が経って腹が出て、ハゲて、加齢臭を漂わせたオッサンが特に「俺の知ってるプレリュードじゃない!」とか言いそうです(笑)。
山:そ、それはわかりませんけど……(苦笑)。







