非倫理的な行動が生まれるメカニズム

 当然ながら、最終結果への意識が強いリーダーの下では、フォロワー自身の最終結果への意識も強まる。そのため、フォロワーが非倫理的な行動を多くとることがわかっている。

 また、非倫理的行動だけでなく、同僚の邪魔をしたり、不利になるような行為をすることや同僚を助けたり、お互い仕事がしやすいように振る舞わなくなることもわかっている。

 それは、最終結果への意識が強いことで、結果を出すことにフォーカスが強く当たり、周囲への配慮や慮りのようなものがなくなってしまうことを示している。

 ただし、このうちフォロワーの最終結果への意識が強くとも、自分に自信があり、誠実な人においてはその影響が小さいこともわかっている。最終結果への意識が強いことは、ゲーム的な思考が生まれ、同僚を貶めることでゲームに勝つという結果を得ようとするが、自分に自信がある人や誠実な人は、そこまでしなくとも自分が勝つことができるという観点から、同僚の邪魔や不利になるような行為を取らないことも併せて示されている。

 リーダーの最終結果への意識が高いことは、良い結果をもたらすこともあると同時に非倫理的行動を引き起こすというのは、リーダーにとって非常に悩ましい問題である。

 もちろん、チームや職場として結果を求めないことにすれば良いのだが、経営組織でなかなか「最終結果を意識しなくて良い」とは言えない。また目の前で、場合によっては業績が上がっていくのを見れば、自分が良いリーダーシップを発揮していると誤解もしやすい。業績が上がっていくことでリーダーシップがうまく発揮できていると判断してしまう。

 ただしその背後では、着々と非倫理的な行動が生まれやすい環境が出来上がっていることも頭の隅に置いておきたい。

(本稿は書籍『リーダーシップの科学』を一部抜粋・編集したものです)