元フィデリティ投信の投資調査部長を務めた著者であるポール・サイさんが「S&P500」の3倍超という驚異的なリターンを生んだ米国株の投資術を初公開! ポール・サイさんが株価低迷期にエヌビディアを買い、成長を見抜けたのは、企業に潜む“成長のストーリー”を見抜いたから。初の著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』では、そんな、成長ストーリーの読み解き方から、銘柄選びの極意、買いのタイミング、暴落時の対処法、リスク管理までを体系的に解説。さらに、厳選した“10倍株”候補の8銘柄も特別公開! 新NISAで投資を始めた人、日本株から米国株へとステップアップしたい人に最適な、“米国株で勝つための決定版”だ。今回は、その『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』から、ネットフリックスが長期でみて有望な理由について抜粋し解説する。

危機のたびに姿を変えた、ネットフリックスの株価がまだまだ上がる理由!Photo: Diego/Adobe Stock

ネットフリックスは“良い投資ストーリー”を持つ、長期保有向き銘柄だ!

 長期での株価上昇が期待できる、良い投資ストーリーを持つ会社の例としてネットフリックスを挙げたいと思います。ネットフリックスは動画配信サービスの代表的存在として、もう日本でもすっかりおなじみの存在でしょう。同社は実に世界190以上の国や地域で動画配信サービスを行っています。そのような世界中の家庭への浸透度とは裏腹に、現在、ネットフリックスの株式市場での注目度は一昔前ほど高くないかもしれません。

 今、アメリカの代表的な大型テクノロジー株を示す「マグニフィセント・セブン」にもネットフリックスは含まれていません。その少し前に使われていた「GAFA」や「GAFAM」にも入っていません。2015年に株式評論家のジム・クレイマー氏が提唱した「FANG」までいくと、やっとネットフリックスはFANGの「N」として登場していました。つまり、現時点では、かつてほど株式市場で脚光を浴びていないことがわかります。

 しかし、私はこの銘柄に注目し、2022年8月配信の自身のメルマガで買い推奨しました。ネットフリックスの強みは、大きな予算をかけて制作するオリジナル・コンテンツにあります。このオリジナル・コンテンツはとても好評で、今もなお数々のヒット作を生み出しています。

利益が拡大するビジネスモデルになっている!

 そして、ネットフリックスは世界190以上の国や地域にわたる圧倒的に大きなコンテンツ配信網を持っています。良いコンテンツを制作すれば、それを幅広く活用し、大きく利益を出すことができる構造になっているのです。そして、その利益を次のコンテンツを制作する資金に回せます。

 ネットフリックスでは、このようなサイクルがぐるぐる回って、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が言う「弾み車(フライホイール)」の効果が出ているのです。その結果、会員数は競合他社を大きく引き離す規模に成長しました。

 とはいえ、動画配信サービスの競合各社も必死にサービス強化を進めています。競争の激化はネットフリックスにとって痛手となり、会員数の増加ペースが鈍化する可能性もあります。

大量の社員をクビにして危機を乗り越えたネットフリックス!

 ただ、ネットフリックスには、逆境に立ち向かえる、組織的な強さが備わっていると私は考えています。なぜなら、ネットフリックスには、とんでもない逆境を乗り越えてきた歴史があるからです。少し意外に感じる人もいるかもしれませんが、ネットフリックスはもともとネットで動画配信サービスを行う会社ではありませんでした。創業当初は郵送でDVDをレンタルするという、むしろアナログなビジネスを行っていたのです。

 そのため、インターネットの高速化という社会全体にとっては好ましい変革も、この会社にとっては会社存亡の危機を招く一大事でした。それは「動画配信サービス競合との競争激化」などとは比べものにならないほど過酷な状況だったのです。

 そんな中でネットフリックスは、郵送でのDVDレンタルをやめ、ネットでの動画配信サービスを行う事業へ大転換を果たしましたが、その大転換は生やさしいものではありませんでした。また、ライバル社との競争で経営危機的な状況に陥ったことなどもあり、その際に大量の社員を解雇したこともあります。一見、冷酷にも映る経営判断ですが、これは「まさにアメリカ的な真に資本主義的な会社」の姿とも言えるでしょう。

 数々の荒波を乗り越えた歴史を持つネットフリックスだからこそ、その人事システムは特別であり、環境変化に適応する強靭さを備えていると私は考えています。

 ネットフリックスは、質の高いオリジナル番組を数多く制作していることで知られています。ですが、実は同社自身の歩みそのものにも意外で劇的なストーリーが刻まれているのです。

危機のたびに姿を変えた、ネットフリックスの株価がまだまだ上がる理由!

※本稿は『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。