年末が近づくとやるべきことに追われる一方で、本当に終わらせるべき仕事が後回しになりがちだ。ではこの時期、頭のいい人は何を優先してどう終わらせているのか。本稿では、18言語で話題の世界的ロングセラー『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』の内容に触れながら、「頭のいい人が年内に必ず終わらせる仕事」について紹介する。(ダイヤモンド社書籍編集局・三浦岳)

頭のいい人が「年内に必ず終わらせる」仕事、第1位は?Photo: Adobe Stock

年末の働き方にはコツがある

 年末が近づくと、次から次へと仕事や用事が押し寄せ、プレッシャーを感じる人も多いだろう。

 こうした時期、多くの人は「同時にいくつもこなす=有能」と考え、マルチタスクに走りがちだ。しかし、効率と成果を重視する頭のいい人ほどこの発想を疑い、「一点集中術」を実践している。

『一点集中術』の著者デボラ・ザック氏は、「マルチタスクとは、複数の作業を同時にこなしているのではなく、実際には『タスクの切り替え(タスク・スイッチング)』を高速で繰り返しているにすぎない」と指摘する。

 その結果、生産性は下がり、集中力も大きく損なわれるという。タスクを頻繁に切り替える人ほど生産性が低いことは、ハーバード大学などの研究でも示されている。

 忙しい時期だからこそ、あれもこれも同時に処理しようとするのではなく、むしろ一点に集中する必要があるのだ。

「最重要課題」を明確にせよ

 では、頭のいい人が「年内に必ず終わらせる」仕事とは何だろうか。

『一点集中術』では、とにかく「『いちばん重要なこと』を明確にせよ」と説いている。

 そして、それに「シングルタスク」で優先的に取り組むようにアドバイスする。以下は同書からの引用だ。

 あなたは自分の選択に100パーセントの責任をもち、最後までやりとげなければならない。目の前の作業に没頭するのだ。
 シングルタスクをするには、いまという瞬間、ほかの要求にいっさい応じることなく、1つの作業だけに取り組むことが求められる。
 次の作業に着手できるのは、いま取り組んでいる作業を終えてからだ。
――『一点集中術』より

 年内に最重要課題を終わらせるべき理由は明確だ。

 重要な仕事を先延ばしにすると、それがつねに頭の片隅に居座り、他の作業への集中を妨げる「心理的負債」になる

 だから頭のいい人は、気が進まない仕事であっても、最重要課題から先に片づける。

 もし仕事が山積みで手が付けられない場合は、タスクを、「1分前後で終わるもの」「10分以内で終わるもの」「1時間以上かかるもの」に分けて処理する「1×10×1(ワン・テン・ワン)システム」を取り入れるのも有効だと著者は言う。

 短時間で終わるものはさっさと終わらせてしまい、「1時間以上かかるもの」については2、3日以内にスケジュールに組み込んで、時間を確保して取り組むことで集中のリズムが生まれ、作業全体を前に進めやすくなる。

重たくても「大事なこと」を確実に終わらせる

「一点集中術」は、単なる効率化のテクニックではない。マルチタスクを続けていると、一日の終わりに「忙しかったのに何も終わっていない」という徒労感が残りやすい。

 一方、一点集中術を実践すれば、確実に成果を実感でき、仕事だけでなく私生活においても充実感や幸福感が高まる。

 年内にやるべきことは多い。だが、頭のいい人は、そのすべてを終わらせようとはしない。最重要課題を見極めて、それを年内にやり切る。それこそが、頭のいい人が来年、いい形でスタートダッシュできるようにしている「最善の仕事のコツ」なのだ。

(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術━━限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』に関連した書き下ろし記事です)