中国が官民挙げて追い上げる!半導体競争

 特に今年は半導体産業における、高性能なAIチップ開発を巡る競争が熾烈を極めた。大手IT企業の中で、エヌビディアのGPU(画像処理半導体)をしのぐAIチップを開発し、自社のAIモデルの競争力を高める動きが顕著だ。

 代表的な企業は、米グーグル、アマゾン・ドット・コム、オープンAI、メタ(旧フェイスブック)、アンソロピックなどである。マイクロソフトも、カスタマイズした半導体の設計開発体制を強化している。AIや半導体の開発にヒト、モノ、カネを配分するため、その他の事業で人員削減を実施する企業も増えている。

 そして中国政府も、半導体産業の競争力向上を一段と重視している。中国政府は、2027年までにAIデータセンター向けチップの70%を国産にする計画だ。そのため、ファーウェイの「昇騰(アセンド)」や、株式公開を果たしたムーアスレッドの「MTT」などを優先的に使うよう、IT大手企業に指示したようだ。

 この方針は、米トランプ政権がエヌビディアの「H200」の対中輸出規制を緩和しても変わらないだろう。中国では、GPUの新興企業である沐曦集成電路(METAX)も株式公開を目指している。ムーアスレッドは、独自のAI開発ソフトウエア「MUSA」も提供する。MUSAは、エヌビディアの「CUDA」からの移行が容易だといわれている。

 先端半導体の開発競争に伴い、チップの受託製造企業の重要性も上昇している。25年4~6月、ファウンドリー売上高ランキングでTSMCは70.2%のシェアを獲得した。前期から2.6ポイント上昇している。

 2位は韓国サムスン電子でシェアは7.3%、前期から0.4ポイント低下した。3位は中国の中芯国際集成電路製造(SMIC)でシェアは5.1%、前期から0.9ポイント低下。つまり、TSMCがトップを独走している。

 メモリー分野では、米マイクロン・テクノロジーが個人向けメモリー事業からの撤退を発表した。韓国SKハイニックス、サムスン電子など、AI向けメモリー半導体のシェア獲得競争も一段と激化している。