2014年、クリミア併合に続き、ウクライナ東部のドンバス地方で武装勢力が侵入して紛争が始まります。
この勢力を率いていたのが、のちに未承認国家「ドネツク人民共和国」の国防相となる、イーゴリ・ギルキンです。彼は国立モスクワ歴史文書大学出身なのですが、同窓生の証言によると、学生の頃から帝政ロシアの復活を訴えていて、「20世紀初頭に生きているような人物だった」と言います。
『戦闘国家 ロシア、イスラエルはなぜ戦い続けるのか』(小泉 悠、小谷 賢、PHP研究所)
また当時、ギルキンと共に蜂起した幹部クラスは多かれ少なかれ、ロシアで人文系の教育を受け、ギルキンと同じように大ロシア主義(ロシア民族こそがユーラシアの中心であり、他の民族・国家はロシアの統治下にあるべきだという思想)的な傾向を持つ人びとでした。
インテリであるがゆえに、過去のロシアの栄光や、現在のロシアの不利な状況に対する歴史的な視座を持っているのです。
ロシア政府高官のなかにも、「現実が自分たちの理想に合わなかったら、自ら武器を持って理想を現実にする」という発想が、とくに1990年代のワイルドな時代に青年期を過ごしてきた人物には見え隠れします。
社会の中核層のなかには、現在の国境のあり方に不満を抱き「我々が弱くなればさらに押し込まれる」「いずれは現状を変えなければいけない」といった感覚があると思います。







