ウクライナ侵攻がもたらしたロシアの致命的損失とは写真はイメージです Photo:PIXTA

ウクライナ侵攻においてプーチン大統領は「戦闘はロシアに有利に進展している」と主張しているが、国際関係アナリストによれば、地政学的にはロシアは「歴史的な大敗」だという。地政学というフィルターを通して見えてきた、ウクライナ侵攻の真実とは。※本稿は、北野幸伯『[新版]日本の地政学』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

圧勝と見られたロシアが
地政学的大敗北を喫した理由

 2022年2月に始まったウクライナ戦争は、執筆時点(編集部注/『[新版]日本の地政学』の発売は2025年6月)で「ロシアが優勢だ」と報じられています。それは「驚くべき話」ではないでしょう。なんといっても、ロシアは「軍事力世界2位」と呼ばれた国なのですから。

 ちなみにロシアでは、ウクライナ侵攻は、「長くても2週間ほどで終わる」と思われていました。国営メディアは「2~3日でウクライナの首都キエフを陥落させることができる」などと喜々として報じていたのです。

 そして、ロシアの国営メディアは、すべてプーチンの意向に沿った報道をしています。つまり、プーチン自身も、「極短期間でウクライナに勝つことができる」と考えていたのでしょう。

 証拠もあります。よく知られていることですが、プーチンは、「ウクライナ侵攻」を「戦争」と呼ぶことを禁じました。メディアも一般人も「特別軍事作戦」という用語を使わなければなりません。

 例えば一般人が、SNSに「戦争反対」と投稿したり、プラカードを持って外に出たりすれば、リアルに逮捕されます。

「特別軍事作戦」という用語は、「ウクライナ侵攻は、戦争といった大げさなものではない。数日で終わる『作戦』なのだ」という意味です。