
ロシアとウクライナの衝突が始まってから、すでに3年以上が経過した。しかし、和平への道は一向に見えてこない。その背景には、ウクライナ兵にロシアと戦ってもらいたいNATOと、戦争の長期化をのぞむ各国の思惑があった。ウクライナ戦争が終わらない本当の理由を、国際政治の論理から読み解く。※本稿は、福山 隆『トランプ帝国の「ネオ・パクス・アメリカーナ」-米中覇権戦争の行方と日本のチャンス』(ワニ・プラス)の一部を抜粋・編集したものです。
ヨーロッパ諸国とアメリカは
利害が一致しない?
ウクライナ戦争はNATOの代理国としてウクライナがロシアと戦う構図になっている。代理戦争では、「船頭多くして船山に上る」の譬え通りに、当事国(ウクライナとロシア)のみならず、ウクライナを支援するNATO、とりわけアメリカとヨーロッパ諸国の利害の違いがあり、これを調整するのは至難である。
各国の思惑はこうだと思う。
アメリカのそれは、「“力ずくで”ウクライナ戦争の和平調停を達成し、ロシアに恩を売り、米ロ関係を改善する。それにより、中ロ・ロ朝・中朝を分断すること」「和平調停の成果を事後のトランプ政権の政策実行の“追い風”に活用すること」「アメリカへの安全保障の依存度が高いヨーロッパを自立させ、欧ロ均衡を図り、アメリカは大西洋の彼方から欧ロを分割統治(divide and rule)すること」などが考えられる。
ロシアは、「トランプを上手に操縦し、極力有利な条件で調停をかちとること」「欧米分断」「中国との戦略的パートナーは手放さず」などが考えられる。