老親との海外旅行のために準備していたこと

2010年90代の市毛良枝さんと母、アメリカ・オレゴン州のローズガーデンで2010年90代の母と、アメリカ・オレゴン州のローズガーデンで(筆者提供)

――なるほど、親が好きそうな旅を考えるのではなく、「自分が行きたいところ」に行くのですね。そうすることで「喜ばせなくては/喜ばなくては」というプレッシャーから解放されそうです。一緒に新しい経験をすることも、親孝行であり、それは何歳からでも遅くない。そのために親子が準備すべきことは何でしょうか?

 まず、大切なのは体力づくりです。高齢者は日々の生活が身体能力の維持につながっています。介護状態になっても「着替える、水を飲む、ご飯を食べる、運動をする、刺激を与える」という普通の生活を、できるだけ自分でしてもらうことが大切です。

 そして、子ども側は準備を入念に。まずは常備薬と必要な消耗品(介護食、トロミ剤、防水シートなど)、体温計、血圧計、パルスオキシメーター、使い慣れた箸やスプーンほか、親が日常的に使うものをまとめます。

 次に、旅行保険です。不測の事態に備えて空港でも入れるような掛け捨ての海外旅行保険に加入しました。あと、体が不自由になった高齢者を一人で連れていくのは無理です。もしもの時は親に付き添わねばならないので、誰か他に動ける人が必要です。きょうだいや友人などを巻き込み、一緒に行くこともお勧めします。

不規則な仕事と介護、どう両立していた?

――旅が終われば日常生活です。仕事との両立はどのようにしていたのでしょうか。俳優の仕事は不規則で、行政サービスを利用するにも、会社員以上に難しかったのでは?

 確かに、(行政の介護サービスは)9時から17時に働く人を想定している制度なので、合わないことはたくさんありました。ただ、これも人を巻き込むことでなんとか日常を回すように工夫していました。

 そもそも、介護はある日突然始まるのではなく、緩やかに自立した生活が難しくなっていくという変化があります。親の状態に合わせて、徐々に対応していくしかありません。今、不安がある人は、地域包括支援センターや自治体の介護相談の窓口などに行き、まずは相談してください。