子ども向けNISA子ども(向け)NISAは早ければ2027年にスタート。子どものお金について、親も祖父母も考えるべきことや、責任が増えることは間違いない 写真:ぱくたそ:モデル:ゆうきちゃん

政府は子ども向けのNISAを新設する予定だ。現時点での情報では、「つみたてNISA」で、上限は600万円、12歳から引き出しが可能となる方向で議論されている。さっそく巷では「これで大学資金を作ろう」などといった声もあがっているが、これは禁じ手。一方、子ども向けNISAと引き換えに、ある「税優遇の廃止」と「課税強化」の2つがあるかもしれない。子ども向けNISAの上手な使い方やよくある誤解、税に関する2つの改悪の可能性を『ジュニアNISA入門』(ダイヤモンド社)の著者でもあるファイナンシャルプランナーの深野康彦さんに聞いた。(鈴木豪、ダイヤモンド・ザイ編集部)

子どもにも解禁されるNISA
これで資産1億円が近づいた!

 政府・与党がNISAについて、現在は利用対象外の未成年(18歳未満)の子どもも利用できるよう改正する方針であることが確実視されている。2026年度税制改正大綱に盛り込み、早ければ2027年の制度スタートを目指しそうだ。そうなれば、旧NISA制度で存在した、ジュニアNISAのような、子ども向けNISAが新NISAの仕組みに沿うかたちで復活する。(なお本稿では新制度の名称は未定のため「子どもNISA」とする)

 報道等で伝わっているのは、解禁されるのは国が指定した投信を積立購入できる「つみたてNISA」で、個別株は買えない。累計の投資額は上限が600万円で、積立した投信を売れるのは12歳からとなりそうだ。

『ジュニアNISA入門』(ダイヤモンド社)の著者でもあるファイナンシャルプランナーの深野康彦さんは、子どもNISAは「子ども向け」だが、まず、一世帯当たりの非課税投資枠が拡大する点に着目。NISAの非課税投資枠(つみたて投資枠と成長投資枠で1800万円)に加え、「世帯全体の非課税枠を増やす点で重要」であると指摘する。

 前出のように現在の議論では子どもNISAの枠の上限は1人600万円になるとされている。これに夫婦2人のNISA枠3600万円(1800万円×2人)を足すと、仮に子どもが2人いる世帯なら世帯全体の非課税投資枠は4800万円となる。

 深野さんは「一般的な世帯なら、5000万円弱の非課税の投資枠があれば十分だ」と指摘。そして、「皆が買っている世界株のインデックス投資信託(例えばオルカン)に投資したとしても、世帯の枠を全部使って10年単位で運用すれば、8000万円~1億円に増える可能性が十分にある」と、1億円達成も夢ではないと語る。つまり、世帯単位でどのように運用計画を立てるかが一層重要になるのだ。

 子どもNISAは子ども名義の口座で資産は「子どものもの」。しかし「子育てに関連する支出」を子どもNISAから引き出して「子ども本人のために」使えば問題はない。

 ちなみに、子どもNISAは、「NISA口座以外の金融所得を増税する布石ではないか」との見方も根強い。「これだけの非課税枠があるのだから、枠を超えた分は増税します、と政府も言いやすい」(深野さん)からだ。仮にNISA以外の口座が増税されるとなれば、家族のNISA枠を活用することの重要性は増すばかりだ。

大学資金を新・子どもNISAで
用意するのは「愚かな行為」

 子どもNISAの導入の報道を受け、「大学資金を子どもNISAで用意しよう」といった声が聞こえている。しかし、深野さんは「資金に余裕がある世帯なら問題ないが」と前置きしつつ、将来の教育費を全額、子どもNISAで準備・運用するのは「禁じ手」だと警告する。ポイントは「長男が18歳の時の3月」など”決まった時期に確実に必要になる資金“という点だ。

「子どもの入学金を払う時に、大暴落が起きていたら必要なお金を用意できなくなるリスクがある」(深野さん)からだ。確かに2024年に新NISAがスタートして以来、この2年間の相場は絶好調だった。だからこそ「新NISAから投資デビューした人はこれが普通だと錯覚しがち。だが、相場には暴落も長期低迷もあることを忘れてはいけない」と戒める。

 例えばNISAで準備していたのが、「将来のリフォーム資金」だったとしよう。リフォームを予定していた時に暴落があったとしても「リフォームを先送りして、相場の回復を待つ」という手段も取れる。だが、入学金とかだと、そういうわけにもいかない。

 深野さんのおススメの教育資金の準備は、「2階建て」の戦略。ベースとなる1階部分を元本が確保される定期預金や学資保険で準備する。ただ、それだけだとインフレ・物価上昇に負けるリスクがある。そこでそのリスクを補うべく、子どもNISAで2階部分を用意するのだ。