地上波で放送しなくてもいい
「コアファン」を裏切らないことが大切

――なるほど。ブレない「理想」が結果的に独自の強みになっているのですね。それをビジネスとして持続可能なものにするための、もう一つの秘訣は何でしょうか。

宮川 もう一つの重要な理想は、「コアファンを裏切らない」ということです。

 新しい『鬼平犯科帳』シリーズは、地上波では基本的に放送していません。なぜなら、私たちの作品のメインターゲットであるアクティブシニア層は、必ずしも現在の地上波テレビが求める視聴者層と一致しないからです。無理にマス(大衆)に合わせるのではなく、お金を払ってでも私たちの作品を見たいと思ってくださる680万世帯の加入者の方々を、何よりも大切にしたい。そう考えたんです。

 地上波放送はじめマスメディアに出なくても、熱烈なファンに支えられている俳優やシンガーは沢山いらっしゃいます。我々もそこを目指すべきだと考えています。

 もちろん、制作には莫大な費用がかかります。時代劇は一般的な現代ドラマより20%~40%程度コストが多くかかります。その費用を回収するためには、多角的な視点が必要です。

 そこで重要になるのが、海外への配信や、イベント、グッズ展開といったIP戦略です。例えば、YouTubeチャンネルでは海外ファン向けに英語字幕版を配信していますが、これがインドネシアなどで驚くほどの人気を博しています。

『暴れん坊将軍』が『SHOGUN 将軍』と同様に楽しまれているという嬉しい誤算もありました。そこで改めて『暴れん坊将軍』は、身分の高い人物がそれを隠して、市井の人々の味方をするという、多くの人に親しまれる「普遍性」があることを悟りました。これはずっと成果を出し続ける上でも大事なことでしょう。

 熱量の高いファンベースを築くことは将来への大きな投資になります。こうした多角的な展開で得た利益を、再び次の作品という「理想」の実現に投資していく。この好循環を作ることが、長期的に成果を出し続けるための鍵なんです。