Photo by Shogo Murakami 衣装協力=イザイア/ISAIA Napoli 東京ミッドタウン メイク協力=ラ・メール スタイリスト=川田真梨子 ヘアメイク=林摩規子
「どうすれば部下に慕われるリーダーになれるのか」。多くの管理職が一度は抱えるこの悩み。しかし、歌舞伎俳優・松本幸四郎が「鬼平犯科帳」の長谷川平蔵を通して見出した答えは、あまりにもシンプルで、核心を突くものだった。ビジネス誌「プレジデント」の元編集長・小倉健一氏が聞いた。(歌舞伎俳優 松本幸四郎、取材・構成/小倉健一)
「慕われたい」と思っていないから
自然と人が集まってくる
――組織のリーダーは、多様な個性を持つメンバーをまとめ、一つの目標に向かわせるという重要な役割を担います。「鬼平犯科帳」で松本幸四郎さんが演じる長谷川平蔵のチームには、与力や同心だけでなく、元盗賊などの密偵も含まれる、非常に多様な人々がいます。彼らがなぜ、平蔵という一人のリーダーのもとに結束できるのでしょうか。その求心力の源泉はどこにあるとお考えですか。
松本幸四郎さん(以下、幸四郎) それは、平蔵が彼らを「部下」や「手駒」として見ていないからだと思います。たとえば、怖いから従っているとか、お金のために働いているといった関係性ではありません。ついていけば生活に困らないだろうとか、いざという時に助けてくれるだろう、というような損得勘定で動いている人間は一人もいないのです。
元盗賊の密偵たちは皆、かつて道を外れ、世間からはみ出してきた者たちです。しかし、平蔵という人間に出会い、その生き様に触れることで、ある種の「生きがい」を見出したのだと思います。
彼らは平蔵を尊敬し、何かを学べるということを感じるから傍に居続けるのでしょう。平蔵もそれを見抜く力があって、ただ便利だから傍に置いているわけではない。
――なるほど、現代の組織論で言う「エンゲージメント」(社員が自発的に組織の目標に共感し、自らの意思で貢献しようとする心理的なつながりや主体的な関与の度合いを指す)という概念に、その「生きがい」は近いかもしれません。しかし、多くのリーダーは「どうすれば部下に慕われるか」「どうすればエンゲージメントを高められるか」といったテクニック論に走りがちです。
幸四郎 平蔵は「慕われたい」と思って生きてはいません。「自分はこういう生き方をする」という確固たる姿勢があるだけです。その姿に、周囲の人間が魅力を感じ、自然と集まってくる。そういうことだと思います。
だから彼のチームには、キャラクターが重なる者が一人もいません。皆バラバラです。もし平蔵が「慕われたい」などと考えて部下を集めていたら、あのような多様性あるチームにはなっていなかったでしょうね。
「部下に対して堂々と振る舞いたい」悩み
人を惹きつける話し方や目線の置き方は?
――ビジネスパーソンの中には「職場で管理職としてどう振る舞えばいいのかわからない」「部下や後輩に対して堂々と振る舞いたい」などの悩みがあります。様々なキャラクターを演じてこられた幸四郎さんから、人を惹きつける話し方や目線の置き方など、振る舞い方のアドバイスをいただけますか。







