Photo:JIJI
ディズニーとOpenAIが提携を発表。著作権に厳格で、生成AIサービスを提訴してきたディズニーが、なぜOpenAIでの二次創作を解禁したのか? さらにこの動きは、性能で勝るGoogleの「Gemini」に引導を渡す“詰み”の一手になる可能性も。AI覇権争いの勝敗を決する、恐るべき戦略シナリオを解説します。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)
ディズニーが課した
2つの「禁止事項」
ディズニーとOpenAIがまさかの事業提携を発表しました。公式発表によれば2026年以降、OpenAIのユーザーはChatGPTや動画生成エンジンのsoraを活用して独自のディズニーコンテンツを生成できるようになります。
公式発表には「ユーザー制作のソーシャル動画をファンが見て共有できる」と明記されていますから、自分が作ったミッキーマウスの短い動画をSNSで公開しても大丈夫だということになりそうです。これは著作権に厳しいディズニーの大規模な戦略転換です。それが意味するところを解説したいと思います。
今回の提携は3年間と期限がきられたうえで、そのうち最初の1年間はOpenAIがディズニーとの独占契約の権利を持ちます。ジェミニなどのライバルは1年間は同じような提携をすることができません。
契約ではユーザーがディズニーが保有するIP(ひらたくいえばキャラのこと)を自由にOpenAIの生成AIを通じて生成できるようになります。ディズニーが権利を持つIPとして有名なものとしてミッキーマウス、アリエル、ベイマックス、アイアンマン、ダース・ベイダー、ヨーダなどがその対象になります。
一方で禁止事項もいくつかあります。まず映画に出演する俳優は対象外。ですから同じキャラでもハン・ソロやジャック・スパロウは生成できません。また不適切(有害・暴力的など)なコンテンツ生成を防ぐ強固なガードレールが導入されるので、おかしな動画や画像を作ることはできません。この点についてはディズニーとOpenAIが共同でコミッ
もうひとつ重要なことは、ディズニーが過去に制作した映画やアニメなどのコンテンツについてはOpenAIは学習できません。これが提携の主なルールです。
これらのルールを守ったうえで、ディズニーが保有するIPを生成AIを通じて世界中のユーザーが利用できるようにするというのが今回の事業提携の画期的なところです。その意味を考えると、ディズニーとOpenAI双方の興味深い戦略がうかびあがります。







