一方でディズニーのファンは、自分の推しについての画像や動画を独自のプロンプトで生成できます。
「アラジンが偶然、アリエルと遭遇して共同して海賊を退治する動画を作って」とか、「ミッキーが奈良の寺院で弥勒菩薩と一緒に散歩するイラストを描いて」といった具合に、推しの世界での自分だけの設定を、たとえ絵がうまくないファンでも自在に作ることができます。そしてそれをSNS上で、他のひとたちに公開することもできるでしょう。
それは結果的にディズニー作品の世界の推しの層を分厚くしていきます。まわりまわって推しの存在が公式作品としての続編やスピンオフ、テレビアニメシリーズなどのビジネスの収益を拡大させていく効果が生まれます。さらにガードレールの導入で、作品の世界観がファンによって壊される危険性は小さく抑えられています。
このように費用対効果を考えると、ディズニーは提携によりOpenAIから金銭的な利益を提供してもらううえに、潜在的なIPの価値を高めてもらう経済効果が期待できます。これはビジネスとしては大きなメリットです。
一方のOpenAIも、生成AIに対する既存業界の懸念の払しょくという大きなメリットを享受します。
生成AIのような破壊的な爆発力があるイノベーションは、政治や業界の介入を通じて社会につぶされるリスクを常に抱えています。中でもディズニーは一番手ごわい大企業のひとつです。
そこをまず味方につけたことで、生成AIは今後、他の映画産業や日本のIP大手、つまりソニーや任天堂、集英社といった手ごわい相手を味方につけやすくなります。これはOpenAIにとっても業界全体にとっても大きな前進です。
OpenAI独自のメリットもあります。ディズニーキャラの生成機能の課金方法はこれから設定できるのですが、たとえばそれを競合するジェミニ3の有料版と同じ価格に設定する方法があります。
一般の消費者は2つも3つも有料版をサブスクすることはしないでしょうから、家族にひとりでもディズニーファンがいる家庭を中心にOpenAIのシェアがグーグルを引き離す効果が期待できます。







