――精密部品加工はどんなお仕事を?
山田 工場にあるホイスト式天井クレーンのフックや内部の精密部品を作っています。あとは「機械のシャフトが折れたので、作れないか」「メーカーに依頼すると何カ月もかかる特殊なねじを1個作ってほしい」といった特注品の相談を受けることもよくあります。
溶接や金属加工の技術を組み合わせて作ることも多いですね。例えば、生コンクリートの材料を搬出する装置、ベルトコンベヤーのふたなども作りました。プラント工事も手がけています。
――実に業務の幅が広いですね。
山田 お客さまのご要望に一つ一つお応えするうちに自然と広がっていきました。
今、力を入れていこうとしているのは「ブロックアーム」という、建築用コンクリートブロックを挟んでパレットに載せる機械です。「溶接工の高齢化でメーカーが廃業して手に入らなくなってしまった」とお客さまから相談を受けたので、製品を分解して図面を引き直し、再製品化しました。日本で作っているメーカーがほとんどないので、今後は全国的に販売する予定です。
―― 一方、経営面の課題はありますか?
山田 鉄工業界自体の景気が悪く、弊社も前期は売り上げが落ち込みました。そこで営業活動を強化しています。それが奏功し、直近では、毎月5社前後のお客さまから新規の注文を頂いています。
創業当初からお世話になっている福岡信用金庫さんからも、融資だけでなく、新規のお客さまをご紹介いただいたり、東京での展示会出展をご案内いただいたりしていて、本当にありがたい限りです。
――心強いバックアップですね。
山田 もう一つの課題は、若手技術者のスキルアップです。溶接だけしかできない技術者もいるので、切断や穴開けなど機械加工の技術も少しずつ教えています。
コンクリートブロックを運搬するときに使う「ブロックアーム」(左)と、特注品のクレーン用の精密部品(右)
また営業の経験もしてもらっているのですが、金額の見積もりはできるだけ自分で考えさせるようにしています。私自身、祖父から「将来社長になるなら現場から経理まで全部覚えろ」と言われて育ちました。社員にもあらゆる業務を経験してもらうことで、成長してほしいと考えています。
――今後の目標をお聞かせください。
山田 困っているお客さまに喜んでいただくことが最もうれしいことなので、そういうシーンを増やすことが第一ですね。それとともに、社員が「この会社で働いてよかった」と思える環境をつくりたいと考えています。給料を上げ、社員旅行のような福利厚生も充実させることで、社員のモチベーションが高まり、より質の高い仕事につながる。そうしたよいサイクルを実現させたいです。
(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2026年1月号掲載、協力/福岡信用金庫)
事業内容:溶接、精密部品製作
従業員数:10人
所在地:福岡県福岡市東区松島1‐13‐10
電話:092‐621‐9790
Instagram:ymd_s.s (㈱山田製作所)







