過剰な発熱や重症化を避けつつ、自然なかたちで微生物との接点を保つことが望まれます。
新型コロナによる外出制限が
乳幼児にもたらした悪影響
もう1つ最近の例を挙げると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、現代社会に大きな変化をもたらしました。その1つが「極端な清潔生活」の実現です。
2020年から2022年にかけて、世界中の乳幼児たちが「接触のない生活」を強いられました。これは、結果として、衛生仮説やマイクロバイオーム仮説の検証にも貴重な実地データを提供することとなりました。
アイルランドで実施されたコホート研究では、ロックダウン中に生まれた乳児において、アトピー性皮膚炎や喘鳴、吸入性アレルゲンへの感作率が増加していたことが示されています。
ロックダウン下では、外出制限により自然とのふれあいが少なくなり、免疫応答のバランスが崩れてTh2細胞が優位になったからだと考えられます。
また、保育園はロックダウンされなかったとはいえ、自宅保育の子どもも多く、集団保育といっても、可能な限り感染リスクを伴うような行動は避けられる事態となりました。
そのため乳児たちは集団生活による感染経験をほとんど持たず、腸内環境や皮膚常在菌の多様性も例年と比較して低下していたという報告もあります。
これは、まさに「人間と微生物との付き合いが、現代のパンデミックによって人工的に断絶された」という未曽有の状況でした。
『アレルギーの科学 なぜ起こるのか どうして増えているのか』(森田英明編著、足立剛也編著、講談社)
ここまで読むと、「清潔であること」が悪いことのように感じてしまう方もいるかもしれませんが、決してそういうことではありません。
問題なのは、清潔すぎること、そして自然とのふれあいが極端に減っていることなのです。感染症を防ぐための衛生は必要ですが、同時に私たちは微生物の多様性の中で生きている存在であるという事実を、忘れてはなりません。
現代のアレルギー疾患の増加は、私たちが自然との関係性を見失いつつあることへの警鐘でもあります。
これからの時代に必要なのは、「清潔」と「自然とのふれあい」を両立させる知恵と工夫です。子どもたちが健やかな免疫を育み、アレルギーに縛られずに生きていくために、私たちは再び“自然との共生”を考え直す必要があるかもしれません。







